約 2,188,231 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2200.html
目を開けると、書類と機材とよく分からないガラクタの山の中にいた……。 また、ここで夜を明かしてしまったらしい。 時空管理局技術開発部、第六特別分室――通称、螺旋研究所。 数ヶ月前に配属された新しい職場の、真新しい自分のデスクの上で、シャリオ・フィニーノは大きく背伸びをした。 背中に掛けられていた毛布が、その拍子に床に落ちる。 「……起きたか」 研究室の奥、壁面に設置された巨大モニターの映像を眺める上司が、振り返ることなくシャリオに声をかける。 気付かれる程の音は立てていないのに……上司の感覚の鋭さに、シャリオは内心舌を巻いた。 「しょちょー、何観てるんですか?」 気安そうな声を上げながら、シャリオは上司の隣へと歩み寄った。 答えを期待していた訳ではない……現にこの男はシャリオの問いに、沈黙を返すだけだった。 モニターの中では、シャリオの友人兼元上司――フェイトがムガンの大群と激しい攻防を繰り広げていた。 フェイトの紹介でこの男――第六特別分室室長、ロージェノム・テッペリンの助手になってから数ヶ月が経つが、シャリオは未だにこの新しい上司に馴染めずにいた。 技術者としての力量の高さや異常とも言える知識の深さは、今のシャリオでは足元にも及ばない……その点は素直に尊敬出来る。 しかし能力と性格が等しく信頼に値する人間は意外に少なく――元上司のフェイトとその愉快な仲間達は殆ど全員が該当しているが――それはこの男も例外ではない。 寧ろロージェノムの場合、シャリオが今まで出会ったどの人間よりもその傾向が顕著なのである。 アクが強いと言い換えても良い。 普段は周りで何が起きよう顔色一つ変えないのに、妙なところで突然熱血のスイッチが入る……この男の「ツボ」とでもいうべきものが、シャリオには全く理解出来ない。 今も、モニターに送られてくる戦闘映像――ムガン相手に苦戦するフェイトの姿を見ながら、この男は眉一つ動かさない。 自分は不安と心配から今すぐにでも目を逸らしたい位だというのに……。 この人にとってもフェイトは知らぬ中ではないだろうに……冷徹とも言えるロージェノムの態度に、シャリオは内心嘆息を漏らした。 自分の気に入ったものを地面の下に埋めるという上司の迷惑な性癖も、何とかして欲しいとシャリオは思う。 これは最近になって気付いたことであるが、この男はやたらと何かを地面に埋めたがる。 貴重な文献、研究成果、最新型の機材、思い出の品……この男の暴挙によって意味もなく土の中に葬られたものは、数えるだけで嫌になる。 ロージェノム曰く「万が一の時のための未来への遺産」らしいのだが、未来よりもまず今に目を向けて欲しいと切実に思う。 事態に気付いたシャリオの必死の発掘作業――おかげでせっかくの休暇が潰れた――によって一部のものはサルベージに成功した。 しかし未だ多くの要救助者がミッドチルダ中の地下に眠っていることは間違いなく、そしてシャリオの目の届かぬところで新たな犠牲者が出ている可能性も否定出来ない。 それは例えば螺旋力を利用した新型の次元転移装置。 そして例えば……。 「何、これ……?」 突然の地面崩落に巻き込まれ、地下空洞に落ちたスバルは、目の前に広がる信じ難い光景に思わず呟いた。 隣のティアナも同じような顔をしていることから、どうやら「これ」は夢でも幻でもないらしい。 20mは落ちたようだが、バリアジャケットのおかげで自分もティアナも擦り傷程度の怪我で済んだ。 それだけは――否、もしかしたら「これ」も――不幸中の幸いだったといえるだろう。 ……何故、自分達がどれだけの深さまで落下したのかが解るか? 簡単である――今、自分達二人の目の前に佇む鋼の巨人が、大体それ位の大きさなのだから……。 「これって、ガンメン……?」 呆然と呟くティアナの声が、スバルの鼓膜を震わせる。 ガンメン……ああ、確かにこれはガンメンのようにも見える。 しかし今自分達の見上げているこの一本角の巨大ロボは、少し前まで自分達の戦っていたガンメンとは何もかもが違う。 ムガンに比肩する程の機体の巨大さ、人間と同じようなプロポーション、……尻尾。 そして何より……人間では頭部のあるべき場所に、顔がもう一つ付いている。 完全に人型をしているのだ、この黒い機械の巨人は……。 スバルの懐のペンダントが、これまで以上の輝きで脈動する。 その光はアンダーウェアを透過し、地下空洞を淡く照らす。 「スバル……アンタ、何か光ってるよ……?」 ティアナの指摘にスバルは胸元に手を突っ込み、懐のペンダントを引っ張り出した。 鎖の先に繋がった小さな金色のドリル……その鼓動が、輝きが、更に激しさを増していく。 その時、目の前の巨大ガンメンが突如動いた。 二人の前に跪き、腹の辺りにある「口」が、頭頂部付近のハッチが、音を立てて開く……! まるで、主を受け入れるかのように。 「まさか、アタシ達に乗れって言ってるの……!?」 驚愕の声を上げるティアナに、巨人は何も答えない。 ペンダントを握り締め、無言で巨大ガンメンを見上げていたスバルが、その時、静かに口を開いた。 「ティア……乗ろう」 「スバル!?」 瞠目するティアナの答えを待たず、スバルは巨人へと歩み寄る。 「きっと上では、あの試験官の人がムガンと戦ってる。あたしが行っても、きっと足手まといにしかならない……ティアの言うことは正しいよ。 だけどあたしとティアと、そしてこの子が力を合わせれば、きっとあの人の助けになれる。きっとあたし達は、何かが出来る……! そう思うんだ……根拠は無いけど」 淡々と語るスバルの背中が、何となく普段よりも大きく、頼もしくティアナには見えた。 そして……ティアナも覚悟を決めた。 「……上等よ、やってやろうじゃない。アタシ達をパイロットに選んだ幸福を噛み締めながら、馬車馬のように働きなさい」 強がるような笑みを浮かべ、ティアナはそう語りかけながら巨人に近づく。 そしてスバルが頭部の、ティアナが腹部のコクピットに乗り込む。 頭部コクピットの正面、シンプルなコンソール下に、小さな円錐状の窪みをスバルは見つけた。 ちょうどスバルの握るペンダントと同じ位の大きさである。 一瞬の躊躇もすることなく、スバルは窪みにペンダント――コアドリルを差し込んだ。 その瞬間、黒いガンメン――ラゼンガンの二対四つの眼に、光が灯った。 「ラゼンとラガン……この子、二つのガンメンが合体して出来てるんだ」 ラゼンガン頭部――ラガンのコクピットで、スバルはウィンドウに表示した機体データを見ながら呟く。 左右の操縦桿に触れた瞬間、この機体のあらゆる情報が直接頭の中に流れ込んできた。 機体と感覚を共有したと言い換えても良い。 ともかく、今の自分ならばラガンを――ラゼンガンを手足のように自在に動かせる。 スバルはそう確信していた。 それはラゼンの操縦席に座るティアナもきっと同じだろう。 「二人合わせてラゼンガン、格好良いじゃん!」 見た目は思いっきり悪役だけどねーと笑うスバルの前に、ティアナからの通信ウィンドウが開く。 『呑気なこと言ってないで、さっさと地上に出るわよ』 ティアナの言葉にスバルは首肯を返し、左右の操縦桿を握り締めた。 スバルの思考をトレースして、ラゼンガンは大きく身を屈める。 「てりゃああああぁっ!!」 スバルの気合いと共にラゼンガンが跳んだ。 天井を突き破り、一気に地上へと躍り出る。 「あれは……ラゼンガン!?」 突如地下から現れたラゼンガンの姿に、フェイトは驚愕の声を上げる。 いったい誰が乗っているのか……それ以前に何故、ラゼンガンがここに存在しているのか? 螺旋エンジンの構造解析のため、ラガンは半年前に分解された筈である。 首から下の部分に至っては、回収すらされずに廃棄処分されたと聞いている。 しかし今、ラゼンガンは完全な形でフェイトの前に確かに存在していた。 困惑するフェイトの胸中を知ってか知らずか、ラゼンガンは妙に人間臭い動きで、フェイト――正確にはその向こうのムガンへと走り寄る。 『どいてどいてどいてぇぇぇーーっ!』 『道開けて下さい危ないですからぁぁぁーーっ!』 ラゼンガンが上下二つの口を開き、若い少女達の声でフェイトに呼びかける。 その勧告につい道を開けたフェイトの傍を、漆黒の巨人は颯爽と駆け抜けていく。 唖然とラゼンガンを見送るフェイトに、その時、一つの通信が入った。 虚構の街を疾走するラゼンガンは、手近なムガンへと拳を振り上げ、 『よくも散々追いかけ回してくれたなパァーンチ!!』 ――殴った。 『円盤の分際で調子に乗るなキィーック!!』 ――蹴った。 「ティア! 一気に決めるよ!!」 ウィンドウに映る相棒の顔を横目に見遣り、スバルは操縦桿を握る両手に力を込めた。 コンソール中央の渦巻状のゲージが勢い良く回り、まるで咆哮を上げるように機体の全身が駆動音を轟かせる。 ラゼンガンの右掌から突き出したドリルが、手首と融合しながら肥大化し、腕と一体化しながら巨大化し、まだまだ成長を続けていく。 ラゼンガンの全長よりも更に巨大なドリルが、まわる、回る、廻る……!! 「ギガドリル――」 スバルの咆哮と共にラゼンガンは走り出し、殴りつけるようにドリルを突き出した。 唸るドリルがまず一体目のムガンを貫き、続いて二体目と突き破り、そして三体目、四体目……まるで止まることを知らぬように、敵を食い尽くしていく。 「――ブレイク!!」 敵陣を貫通し、名乗りを上げるラゼンガンの背中を、無数の爆炎が赤く染め上げた。 「乙女心が天地を穿ち、魅せてあげるわ底力! 覚悟合体ラゼンガン、あたし達を誰だと思ってる!!」 格好つけるように右腕のドリルを一振りし、即興で作った口上と共に決め台詞を口にするスバル。 ……まだまだ敵は沢山残っているということを、スバルはすっかり失念していた。 隙だらけのラゼンガンの背中に、ムガン達が一斉にビームを叩き込む。 敵の集中砲火にラゼンガンはあっさりと吹き飛ばされ、スバルはコンソールに頭をぶつけ、ティアナはシートから転げ落ちた。 「ぁ痛たたた……もう! シートベルトくらい付けときなさいよ、このポンコツ!!」 したたかに打ち付けた頭を擦りながらティアナが憤慨する。 『うぅ~、鼻打った……』 スピーカー越しに聞こえてくるスバルの情けない声に、ティアナの中で何かが切れた。 「こんっの、馬鹿スバル! 馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、遂に二度ネタなんて馬鹿な真似にまで手を出して……アンタはどれだけ馬鹿なのよ!?」 『ご、五連発!?』 どうでも良い部分に瞠目するスバルを眼光一つで黙らせ、ティアナはシートに座り直した。 左右の操縦桿――ラガンのものとは形が違う――を握り、機体の制御をスバルから奪い取る。 「あのメカクラゲ……もう許さないんだから!!」 クラゲは違うでしょーとツッコミを入れるスバルを無視して、ティアナは己の十八番――幻術魔法の術式構築を始めた。 ラゼンガンの隣にもう一体の『ラゼンガン』――幻術魔法によって創られた虚像――が出現し、二体のラゼンガンの左右に更に新たな『ラゼンガン』が生まれる。 四体から八体、八体から十六体……延々と分裂を繰り返す無数の『ラゼンガン』が、ムガンの軍勢を取り囲む。 操縦桿を握るティアナの両手が、じっとりと汗に濡れている。 数十体もの分身の生成――そんな荒業、今まで考えたことすらなかった。 無理だ……頭の中で、理性とも言うべきもう一人が冷静にそう断じる。 お前のような凡人にそんなことが出来る筈が無い、馬鹿なことを考えずにさっさと諦めろ……。 いや、出来る……もう一人の自分からの警告を、ティアナは頭を振って否定した。 確かに自分に才能は無い、無理と言われても仕方が無いだろう――いつもの自分、今までの自分ならば。 しかし、今は違う……ティアナは心の中の自分に叫ぶ。 今の自分は独りではない――ラゼンガンが手伝ってくれる。 無理を通して道理を蹴飛ばす、今の自分達ならばそれが出来る。 自分とスバル、そしてこのラゼンガンが揃った、今ならば……! 「必殺、101匹ラゼンガン全員集合包囲網」 スバルとは違う――静かだが凄みのあるティアナの名乗りと共に、101体にまで増殖した『ラゼンガン』が一斉にドリルを構え、ムガンの軍勢に突撃する。 ムガン達は一箇所に密集し、全方位から接近する無数の『敵』に、手当たり次第にビームを放つ。 まるでウニの棘のように四方八方に伸びる光の軌跡は、しかし虚像の身体を空しく透過していく。 本体は……どこにもいない。 「――と、見せかけて」 突如ムガンの目の前の空間が歪み、102体目のラゼンガン――幻術魔法で姿を消していた本体――が姿を現す。 その右腕で回るドリルが、飢えた獣のように唸りを上げている。 ムガン達は咄嗟に散開した……しかし敵の攻撃を回避するには、ラゼンガンは余りにも間近に接近し過ぎていた。 「真実はいつも一つなのよアターック!!」 ティアナの怒号と共に、ラゼンガンのドリルがムガンの一体を貫いた。 周囲に固まった味方を巻き込んだムガンの爆発が、半壊した虚構の街を地面ごと大きく抉り取る……この一撃で、残存していた敵の半分近くが消滅した。 『ティア凄い!』 ウィンドウの向こうでスバルが目を輝かせ、ティアナの手腕に喝采を上げる。 『――技のネーミングはイマイチだけどっ!!』 「アンタにだけは言われたくないわよ!!」 スバルの余計な一言に猛然と切り返し、ティアナは上空に逃げた敵の生き残りに視線を向けた。 敵の残存勢力は数十体――恐らく五十は残っていないだろう。 襲撃された当初と比べると、随分と減ったものである。 あの程度の数、スバルなら一撃で粉砕出来る……何の根拠もなかったが、ティアナは自然と確信していた。 「スバル、やっちゃいなさい」 『うん!』 絶対の信頼と共に締めを委ねるティアナに、スバルは力強く頷き、 『――それで、どうやって?』 ……そう言って困ったような顔で小首を傾げた。 ……スバルの言葉に、ティアナの思考はフリーズした。 「……いやいやいや! スバル、アンタ馬鹿ぁ? 空飛ぶなりジャンプするなりしてあいつらの真ん中に突っ込んで、ドリルで一発粉砕すれば万事解決でしょ!?」 再起動したティアナが焦ったようにそう畳み掛けるが、スバルは困ったような顔のまま、申し訳なさそうにティアナから目を逸らす。 『うーん……流石のあたしもあの高さまでジャンプするのはちょっと無理かなー? それに空を飛ぶって言ってもラゼンに飛行機能は無いし、ラガンのブースターもそんなにパワー無いし……』 スバルの返答に、今度こそティアナの思考は凍りついた。 「じゃあ……手詰まりってこと……?」 『認めたくないところではあるけど……』 硬直したラゼンガンの頭上から、ビームの雨が容赦なく降り注いだ。 「うーん、何か予想外に凄いことになってるなぁ……」 空からネチネチと攻撃するムガンのビームから必死に逃げ回るラゼンガン……。 余りにも情けないその姿を、彼女はラガンゼンの頭上――ムガン達よりも更に高い位置から見下ろしていた。 このままでは、いつまで経っても埒が明かない……ジリ貧とも言える眼下の戦況に、彼女は苦笑いを浮かべる。 「助けてあげよっか?」 そう言って地上に降下しようとする主人に、デバイスは不意に、制止の声を上げた。 ≪Wait a minute. My master≫ 「え……?」 不思議そうな顔をする彼女の遥か下で、ラゼンガンが新たな動きを見せようとしていた。 「あぁーもう、あのクラゲ共! こっちの攻撃が届かないからって、調子に乗ってバンバン撃ってんじゃないわよ!!」 『だからアレ多分クラゲじゃないって……』 再度入れられるスバルのツッコミを黙殺し、ティアナは上空のムガンを忌々しそうに睨み上げた。 自分達の攻撃はあの高さまでは届かない――スバルの挙げた絶望的な指摘は、その後の様々な試行の結果、覆し難い事実として立証されてしまっている。 ビルを足場に跳んでみた――より高い位置に逃げられた。 誘導弾らしき飛び道具を使ってみた――敵に届く前に撃ち落された。 最終手段として右腕のギガドリルを分離し、素手で思い切り投げつけもした――重すぎたのかムガンまでは届かず、逆に落下するドリルに自分達が潰されそうになった。 あの空飛ぶメカクラゲ共に一矢報いるためには、奴らの逃げられぬ程の高速の動きで接敵し、そして反撃を許さぬ圧倒的な攻撃力で叩き潰すしかない。 速さと強さ――その二つを両立させる「切り札」を、しかし今の自分達は持っていない。 万策尽きた……ティアナは己の無力さに歯噛みした。 『ティア~、何とかしてよぉー』 情けない声で自分を頼るスバルに、追い詰められたティアナの思考が爆発した。 「うるさぁーい! 馬鹿スバル、馬鹿は馬鹿なりにアンタも何か考えなさいよ!!」 癇癪を起こした子供のように喚き散らすティアナの脳裏に、不意にこれまでのスバルの科白が蘇った。 ――ラゼンとラガン……この子、二つのガンメンが合体して出来てるんだ……。 ――空を飛ぶって言ってもラゼンに飛行機能は無いし、ラガンのブースターもそんなにパワー無いし……。 バラバラに散らばっていたパズルのピースが、頭の中で重なり合い……、 ――ティア……征こうか。 ティアナの中に、一つの「答え」が生まれた。 「スバル……」 モニターの向こうの親友に、ティアナは静かな声で語りかける。 「――何とかする方法、思いついたよ」 ティアナの言葉に、スバルは顔を輝かせた。 『本当!? どんなどんな!?』 期待に満ちた目で続きを催促する親友に少しだけ後ろ髪を引かれながら、ティアナ――ラゼンは頭上のラガンを右手で鷲掴みにし、そして一気に引き抜いた。 『え!? ちょ、ちょっと……ティア!?』 突然の合体解除に戸惑うスバル――ラガンを大きく振りかぶり、 「スバル……逝ってこぉおおおおおおおおおいっ!!」 気合い一発、全力投球――右手に握るラガンを、上空のムガンへと思いきり投げつけた。 「ちょっとティア!? それ字が違ぁあああああああああうっ!!」 非道とも言えるティアナの「何とかする方法」に、スバルは思わず悲鳴を上げる。 しかし親友が託した自分の役割を反射的に理解し、スバル――ラガンは両脚のブースターを点火した。 ラガンの両腕がドリルに変形し、額からも小さなドリルが飛び出す。 ラゼンの腕力にブースターの推進力も加わったラガンのスピードは音速の壁をも突き破り、回避不能の魔弾としてムガンの群れに迫る。 「ラガンインパクト!!」 全身に圧し掛かる苛烈なGに苦痛の表情を浮かべながら、それでもスバルは名乗りを忘れない。 ラガンは更に加速しながら敵陣を突っ込み、その真ん中に巨大な風穴を掘り抜いた。 「あ、あたしを……誰だと思ってる!!」 肩で息をしながら決め台詞を叫ぶスバルの背後で、ムガン達が真昼の花火と化した。 これで敵勢力はほぼ壊滅したが、しかし全てのムガンが破壊された訳ではなかった。 誘爆を免れた一部の生き残りが、未だ僅かであるが存在している。 「もう一度……!」 疲労の色濃く浮いた顔を引き締め、スバルは再びブースターを噴かそうとした。 しかしスバルがペダルを踏み込むよりも、ムガンの動きの方が一瞬早かった。 放たれるビーム、ラガンに――そしてラゼンにも迫り来る死の光。 やられる……スバルは反射的に目を閉じた。 一秒が経過した――予想されるような衝撃は来ない。 二秒が過ぎた――平穏そのものである。 三秒目――まだ来ない。 不審に思い、恐る恐る目を開けたスバルの視界一面に、桃色に輝く光の壁が飛び込んできた。 「防御結界……?」 呆然と呟いたスバルは、その時になって漸く、目の前の虚空に立つ一つの背中の存在に気付いた。 ツインテールに纏められた亜麻色の長い髪、純白のバリアジャケット、そして右手に握る魔導師の杖……どれもスバルは見覚えがあった。 「なのは……さん?」 その呟きに答えるように、なのははスバルを振り返り、そして優しく微笑んだ。 「アクセルシューター」 なのはの周囲に光の弾丸が形成され、ムガンを撃ち抜く。 その攻撃に他の生き残りのムガンが一斉に動き出すが、直後、地上から放たれた金色の雷撃によって全滅した。 慌てて地上を見下ろしたスバルは、右手に戦斧型のデバイスを握り、ラゼンを庇うように立つ試験官の魔導師を見つけた。 「よく頑張ったね、二人とも」 そう言って笑いかけるなのはに、スバルは安心したように肩の力を抜いた。 「……まだまだだな」 一部始終を見終わり、ロージェノムはそう口にした。 「あの程度の螺旋力ではシモンはおろか、この私にも遠く及ばない」 淡々と語るロージェノムの言葉には、落胆したような響きも混ざっている……シャリオは何となくそう思った。 「……じゃあ、何で彼女達の好きなようにさせたんですか?」 助けに出ようとするフェイト達を、ギリギリまで引き止めてまで……。 落胆したということは、その分あの二人に何かを期待しているのではないか……? 今し方口にした「まだまだ」という言葉――失望はしてもまだ見放してはいない、まだ何かを期待している……そういうことではないだろうか。 そう問いかけるシャリオに答えることなく、ロージェノム踵を返した。 「じきに客が来る、それまでに少しは身の回りを片付けておけ」 そう言って立ち去るロージェノムを見送り、シャリオは重い息を吐いた。 答えを期待していた訳ではないが、しかしたまには何か答えてくれても良いのではないか。 嫌われてるのかなーと弱音を吐きながら、シャリオは点け放しのままのモニターを再び見上げた。 モニターの中では、スバル達二人がフェイト達と何かを話している。 恐らく、ロージェノムの言う「客」とは彼女達のことなのだろう。 螺旋力に関しては、次元世界の中ではこの螺旋研究所が真実に一番近い場所にある、ロージェノムが一番真理に近い位置にいる。 あのラゼンガンにしても、どうやらあの上司の私物らしい。 どうしてあんな場所に埋まっていたのかは考えたくもないが、その辺りは後でフェイト達が追求してくれるだろう……精々こってりと絞られるが良い。 思考が黒い方向に陥りかけたその時、シャリオは不意にあることに思い至った。 スバル達をここに迎え入れるということは、やはりあの二人に期待しているということではないか。 気に入らないのならばフェイト達に早々に敵を殲滅させ、二人を機体から引きずり出せば済む筈である。 しかしあの男は最後まで彼女達のやりたいようにやらせ、そしてその全てを見届けた。 それがロージェノムの真意なのではないか。 それがロージェノムの自分への答えなのではないか。 「何だ……ちゃんと答えてくれてたんじゃない」 相変わらず解り難い上司だが、少しだけ解ってきたことがあるような気がする。 上司との良好な人間関係の構築に一歩進んだ……そんな手応えを感じながら、シャリオは来客の準備に取り掛かった。 天元突破リリカルなのはSpiral 第4話「二人合わせてラゼンガン」(了) 戻る目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2257.html
ミッドチルダ北部、ベルカ自治領。 豊かな自然に囲まれ、活気と笑い声の絶えぬその街が、燃えていた。 空を埋め尽くす異形の敵――特定の人間やロストロギアを狙って現れるという質量兵器、謎の侵略者アンチスパイラルの尖兵、ムガン。 聖王教会は直ちに騎士団を出撃させたが、限りある人員での敵の撃退と住民の避難誘導の両立は困難を極め、結局どちらも進まぬまま時間と被害だけが徒に過ぎていった。 「くっ……!」 減らない敵、広がり続ける戦火に、聖王教会の修道女、シャッハ・ヌエラは歯噛みした。 何故このような辺境にムガンが……頭の中を埋め尽くす疑問は、しかし戦場と化したこの場では何の意味も持たない。 大切なのは如何に敵を撃退するか、優先すべきは如何に住民の安全を確保するか。 今の自分達が必要としている言葉は「何故」ではなく「どうやって」なのである。 ムガン一体一体の強さ自体は教会騎士団の敵ではない。 厄介なのは破壊した後に起こる爆発、しかしそれも対処さえ間違わなければ大した脅威にはなり得ない。 だが、それが百も二百も集まって来られれば、当然ながら話は変わってくる。 飽和状態を遥かに超えた敵の物量に攻撃も守備も追い着かず、結果として味方の損害ばかりが増える一方だった。 両手の双剣型デバイスを握り直し、シャッハは空へ――敵陣へと斬り込んだ。 跳躍系魔法を得意とするシャッハにとって、距離や重力は意味を持たない。 十数mもの距離を文字通り一瞬で跳び越え、頭上を浮遊していたムガンをまず一体、斬り捨てる。 両断された一体目が爆発する前に手近な場所――それでも数十mは離れているが――を飛ぶ別のムガンに跳び移りデバイスを一閃、二体目を撃破。 足場として獲物として、敵から敵へと跳び移りながら、シャッハは双剣を振るい続けた。 しかしそれも焼け石に水――如何にシャッハが、騎士達がムガンを破壊したところで、空を覆う敵の軍勢は一向に減る気配を見せない。 劣勢だった、負け戦だった。 しかし退く訳にはいかない、諦めることは出来ない……守るべき人が、救うべき民がいる限り。 その時、 「ディバインバスター!!」 「サンダースマッシャー!!」 凛とした二つの声と共に、白銀の閃光と黄金の雷撃が空を貫いた。 直後、爆炎が空を赤く染め、轟く爆発音が全ての音を塗り潰す。 攻撃に射抜かれ、周囲に固まった仲間をも巻き込んだムガンの爆発、その連鎖である。 「騎士はやて……?」 炎に彩られた空の真ん中に浮かぶ二つの人影、その片割れ――六枚の翼を広げ漆黒の騎士甲冑を身に纏うその少女の名を、シャッハは思わず呟いていた。 「んー、やっぱミッド式はいまひとつ肌に合わんなぁ」 虫食いのように部分的に数を減らした敵の群れを眺めながら、はやてはのほほんとした口調でそうひとりごちる。 見様見真似で撃ってみた親友の十八番だが、威力はオリジナルの半分以下。 術式も魔力も違いは無い筈なのに、しかしその差は歴然……これはもう相性としか言いようが無い。 出力限定を掛かった今の状態ではこの程度が限界だろうか……砲撃でムガンの群れに開けた「穴」、フェイトによるものよりも小さなそれを眺めながら、はやては思う。 「しかし……「口は災いの元」って本当やね。ウチびっくりしたわ」 何かがある……カリムの待つ教会本部へ向かう車の中で、自分は確かにそう言った。 しかしそれはカリムが何か無理難題でも言い出すだろうという程度のものであって、まさか目的地自体が戦場になっているとは流石に想定外であった。 「結構な団体さんみたいやけど、どうするフェイトちゃん? 二回目の限定解除いってみよか?」 まるで緊張感のない、しかし普段よりも明らかに固い口調で、はやては隣を飛ぶフェイトに問う。 出力限定――時空管理局の規定する一部隊の保有戦力の上限により、機動六課の隊長陣の全員がデバイスと本人にリミッターを掛けられている。 フェイトの場合は2ランク落とされて現在A+、Aランクまで制限されたはやてよりは上であるが、それでも心許ないことに変わりは無い。 出力限定は、対象者よりも上位にある特定の人間の権限により、一時的に解除することが出来る。 なのはやフェイト、その他隊長級部隊員の場合ははやて、そしてはやて自身の場合は後見人のカリムと監査役のクロノが、それぞれ限定解除の権限を有している。 しかしフェイトは首を横に振り、格好つけるように右手のデバイスくるりと一回転させる。 「……このままで十分」 力強くそう言い切るフェイト、その言葉に偽りは無い。 あの敵の相手ならばこの四年間、嫌という程やらされてきた。 目測だが、残存するムガンはおよそ二百前後――出力限定を掛けられた身とはいえ、たかがその程度の数、今更自分の敵ではない。 愚問だったか……フェイトの返事にはやては首肯し、続いてシャッハへと視線を向ける 「シャッハ! 空の敵はフェイトちゃんに任せて、教会騎士団は住民の避難誘導や救助に集中して。ウチもそっちを手伝うから!」 聖王教会の騎士は精鋭揃い、それは認めよう。 では何故苦戦しているのか――簡単である、彼らはやり方を間違えているのだ。 戦い方を見た限り、どうやら騎士団の者達はムガンの相手は初めてらしい。 ムガンの最も効率的な駆除方法は、一箇所に集めたところに砲撃を叩き込み、自爆の連鎖を誘発して一気に殲滅することである。 しかし騎士達の採っていた行動は全くの真逆――ムガン一体一体を群れから引き離し、各個撃破するという非効率的なものだった。 爆発による周囲の被害への考慮、そして近接戦闘に特化したベルカ式魔法の特性を考えれば仕方のないことなのかも知れないが、そのような事情ははやてには関係が無い。 現時点で教会騎士とムガンとの相性は最悪――はやてにとって、必要な事実はそれだけで十分だった。 先方の矜持に付き合い無駄な被害の拡大を許容する程、はやては寛大でも愚鈍でもない。 そして自分自身の戦力としての価値も、はやては冷静に分析していた。 先程のディバインバスターの威力から判断して、出力制限の掛けられた今の自分の砲撃の評価は「あってもなくても大して変わらない」程度。 かといって自分本来の戦闘スタイルは広域殲滅型、下手に撃てば地上の街ごと消し飛ばしかねない。 どちらに転んでも役立たず……それがはやてが自分自身に下した評価だった。 以上のような思惑から、はやては敢えて自分を含めたほぼ全員を戦力外と切り捨て、無謀ではあるが一番確実な方法を選んだ。 形振り構っている暇は無い、自分達が手をこまねいている間に減っていくのは人の命なのだ。 はやての指示に、シャッハだけでなくその場の教会騎士全員が瞠目していた。 「騎士はやて……あの数の敵を、その人一人に押し付けるつもりですか!? 我々はただ指をくわえて見ていろと、そう仰りたいのですか!!」 自分達教会騎士団の全戦力を投入しても抗しきれなかった強敵を相手に、あのような小娘独りで何が出来るというのか。 無茶な特攻でも仕掛けて、結果犬死するのは目に見えている。 ……否、本当はシャッハにも解っていた――あの金の髪の魔導師が敵に後れを取ることは無い、はやての判断は正しいのだと。 自分達が手も足も出なかった敵の軍勢に、この二人はたったの一撃で驚くべき損害を与えてみせたのだから。 頭の中では理解は出来る、しかし心は納得出来ない。 何故ならはやての指示を了承してしまえば、同時に自分達教会騎士団は役立たずの無能者であると、間接的にではあるが認めてしまうことになるのだから。 認められない、断じて認めることなど出来ない。 糾弾するように叫ぶシャッハに、しかしはやては顔色一つ変えることなく、背中の翼を羽ばたかせながら地上へと舞い降りる――本当に自分は前線に出ないつもりらしい。 フェイトも周囲に魔力弾を生成し、金色の軌跡を描いてムガンの群れへと突入した。 「騎士はやて!!」 激昂したように声を荒げ、シャッハははやての胸倉を掴み上げた。 憤怒一色に染まるシャッハの顔を真っ直ぐに見つめ返し、はやては静かに口を開いた。 「勘違いしたらアカンよ、シャッハ。ウチの言ってるのは命令やのーて提案、今この状況でウチの出せる最良の選択肢を提示してるだけ……。 余所者のウチに騎士団を顎で使う権限は無い――従うかどうかはアンタら次第や。 でも、もしアンタらがこの街が好きやったら、騎士の誇りと街の皆を天秤に掛けて皆の命の方が重い思うんやったら、不本意やろーけどウチの言うことを聞いて……!」 どこまでも平静さを保った、しかしその実シャッハ以上の激情を押し殺した声音で、はやては目の前の騎士にそう語りかける。 漆黒の瞳の奥で、冷たい炎が燃えていた。 陳腐な矜持に拘る者達に憤っている、無力な自分自身に泣いている。 嗚呼……はやての胸倉を掴む手を離し、シャッハは観念したように項垂れた。 この人も自分達と同じなのだ――絶望に打ちのめされている、無力感に慟哭している。 ただ一つ、自分達と違うものは……この人は自分の無力を素直に認め、その上で自分に出来るやり方で、自分に出来る何かをやろうと足掻いていること。 たとえ自分を曲げてでも、希望を掴み取ろうとしていること。 「騎士はやて……貴女は、卑怯だ……!」 デバイスを握る両手を震わせ、血を吐くように悲痛な声でシャッハはそう口にする。 住民の命を引き合いに出されて、断れる筈などないではないか……。 「……分かりました。貴女のその提案、採用させて頂きます」 泣き顔のような笑みを浮かべてそう口にするシャッハ……その言葉は、戦場の騎士達全ての思いを代弁していた。 はやてもまた泣きそうな笑顔で首肯を返し、周囲から成り行きを見守る教会騎士達を見渡した。 「……皆、頑張っていこーか!」 そう呼びかけるはやてに、騎士達は迷いも乱れもなくこう応える――「応!!」と。 時空管理局の魔導師と聖王教会の騎士、信念も立場も役割も違う者達の道が、今、同じ思いの下で一つに交わった。 しかし結束するはやて達を嘲笑うように、その時、街の情景が――空間が突如ぐにゃりと歪んだ。 ひび割れた地面の底から這い出るように浮上する無数の小さな影――円盤状の頭部に、折り曲げた針金を束ねたような胴体、見覚えのある、しかし初めて見るシルエット。 「人間サイズの、ムガン……!?」 愕然と呟くはやてに反応したように、新たに出現した小型ムガンが一斉にビームを放った。 はやてとシャッハ、そして騎士達は一斉に散開し、雨のように撃ち込まれるビームをかわす。 「ミストルティン!!」 はやての呪文詠唱と共に中空に展開される魔方陣、その周囲に生成された七本の光の槍が、小型ムガンへと放たれる。 光の槍に貫かれ自爆する小型ムガン、その爆発力は上空でフェイトの相手取っている大型ムガンのそれに比べれば遥かに小さく、大きさ相応と言える。 小さくなっただけで、対処法は大型と同じ……攻防の結果からそう判断を下し、はやては大きく息を吸い込んだ。 「何やぁー! 小っこい見た目通り全然弱いやんかぁーっ!!」 周囲に散らばる騎士達を見渡し、はやては突然そう叫んだ。 その顔には無邪気な笑みすら浮かんでいる。 唖然、呆然……はやての突然の変貌に、教会騎士達は大口を開けて固まっていた。 「き、騎士はやて……?」 戦士の顔から一転し、まるで子供のようにはしゃぐはやてに、シャッハがおずおずと声を掛ける。 こいつ頭でも打ったのだろーか……心配の色を多分に含んだシャッハの呼びかけを無視して、はやてはデバイスの先端を手近な小型ムガンへと向ける。 はやての周囲に無数の魔力塊が生成され、 「なのはちゃん風なんちゃってミッド式魔法第二段――アクセルシューター!!」 気合いと共に射出された魔力弾が小型ムガンを撃ち抜き、破壊する。 「小っこくなって強さも半減なんて、何や明らかに間違っとるやろ? 雑魚キャラの進化逆走しとるんじゃないんかぁーっ!?」 周りの騎士達を煽るように、けしかけるように、はやては再び声高に叫ぶ。 空の敵はフェイトが抑えてくれている、地上の新しい敵は自分達が何とかしなければならない……そのためには教会騎士団の協力は何としてでも必要になる。 騎士団が役に立たないというのはあくまで上空の大型群相手の話、この大きさならば、たとえどれだけ数が増えようと気合いと根性次第でどうにでもなる。 無論、先程とは状況が変わった今ならば、騎士達は率先して小型ムガンの駆除に当たるだろう。 しかし大きさが違うとはいえ似たような形の敵に苦戦したのだ、小型ムガン相手に騎士達が萎縮してしまわないという保障はない。 トラウマが刻まれている可能性があるのだ。 極端に言えば、象程の大きさもある巨大なゴキブリに遭遇したとして、その後普通のゴキブリを見た時に人はどう反応するか……自分ならば即座に卒倒する自信がある。 これは微妙に意味が違うよーな……頭に浮かんだ例えに一瞬首を傾げるが、しかしこの場ではどうでも良いことであるとはやては思い直す。 小型ムガンは大型とは別物……そのイメージを騎士達に刷り込ませるために、自分は道化を演じていれば良い。 周りを見渡してみれば、早速はやての「刷り込み」作戦が効果を見せてきたのか、騎士達の表情は少し前とは明らかに違っていた。 絶望や恐怖の色が消え、気概と活力を取り戻している。 あと少し、もう一歩……己の計算通りに気迫を取り戻しつつある騎士達に最後の一押しを加えるべく、はやてはデバイスを構え直した。 景気良く一発デカいのを撃ってみようか……最後の発破掛けに使う呪文を慎重に吟味し、はやてが詠唱を始めたその時、 (――はやて!) 切羽詰まったようなフェイトの声が、突如はやての頭の中に飛び込んできた。 「……フェイトちゃん?」 念話によるフェイトからの緊急通信に詠唱を中断し、空を見上げたはやては、次の瞬間表情を凍りつかせた。 空を埋め尽くす大型ムガンの大群、はやてが地上に降りた時とは比べ物にならぬ程の量に、いつの間にか増殖している敵。 (ちょっとちょっとフェイトちゃん、何で減るどころか増えとるんよ!? しかもこんな洒落にならん数!!) 最初に自分達が砲撃を撃ち込んだ時の数倍の規模にまで膨れ上がったムガンの群れに、はやては念話越しに絶叫した。 (敵の増援……いきなり現れたの) 固い声音で返されたフェイトの返事、念話越しにフェイトの歯噛みする気配が伝わってくる。 上空に広がる絶望的な現実に、はやてのパフォーマンスに釘付けとなっていた教会騎士達も徐々に気付き始めていた。 拙い……愕然とした表情で空を見上げる騎士達に、はやては心の奥で舌打ちした。 ここで折れさせてはいけない、ここで諦めさせてはいけない。 折角ここまで盛り上げてきたのに、ここで絶望に呑まれる訳にはいかない。 気持ちで負けてしまったら、その時点で希望は潰えてしまうのだから……。 「機動六課部隊長八神はやての権限により、フェイト・T・ハラオウン隊長の出力限定を解除します!!」 まるで戦場全体に響かせるように、この場にいる騎士全員に聞かせるように、はやては高らかに宣言した。 同時にはやては上空で戦うフェイトに念話を送る。 (フェイトちゃん、今使える魔法の中で一番派手なモンを一発、盛大にぶち撒けてくれへん?) はやてからも不可解な要請に、フェイトは思わず眉を寄せた。 (え? それってどういう……) (えーから!) そう言って強引に切られた念話に首を傾げながらも、フェイトはデバイスを両手で握り直し、周囲を覆い尽くす大型ムガンの群れを見据える。 「フルドライブモード」 短く紡がれたフェイトの言葉と共に、バリアジャケットの外套部分が消え去り、デバイスが大剣型に変形する。 フルドライブモード――出力限定のために普段は封印されている、フェイトの限界突破形態である。 万が一の時の切り札の筈が、この二週間で二度も使うことになるとは……嘆息したくなる衝動を押し止めながら、フェイトは魔方陣を展開し、デバイスを振り上げる。 突然、空が暗くなった。 大型ムガンの群れに埋め尽くされた青空、その更に上空に厚い雲の蓋が嵌り、太陽を覆い隠しているのだ。 雲の奥で鳴り響く雷、蛇のようにうねる無数の光の軌跡が、フェイトの掲げたデバイスの刀身へと吸い込まれていく。 雷を吸収した魔力刃が激烈な輝きを放ち、太陽の消えた空を眩く染め上げる。 「プラズマザンバーブレイカー!!」 虚空を踏み締め、フェイトは気合いと共にデバイスを振り下ろした。 金色の光の奔流が空を突き抜け、まるで一つの生き物のように蠢くムガンの群れに大穴を開ける。 おお……動揺の声を上げる騎士達を一瞥し、はやては大仰に両腕を広げ、口を開いた。 「見たかぁ! 我ら時空管理局の誇るエース級魔導師の出鱈目さ!! 理不尽さ!! 我が機動六課にはあのフェイトちゃんレベルの猛者がもう五人! そして次点が一体と一匹!! かくゆーウチも本気出せばそいつらに負けへんで!! ウチら機動六課のお仕事はムガンの殲滅! つまり今言った五人と一体一匹が、もうすぐ皆纏めてここに大集合っちゅー訳や!! あと少しや! あと少しウチらが踏ん張れば、最強のご都合主義軍団が到着する!! そしたらあんなメカクラゲの千や二千、チャンチャンバラバラの瞬殺や!! ――だから皆、それまで頑張ろー!!」 演説を終え、はやては勿体ぶったようにゆっくりと両腕を下ろした。 次の瞬間、まるで地を揺るがすような騎士達の咆哮が戦場に轟いた。 溺れる者は藁をも掴む――絶望の波に呑まれた人間は、目の前に差し出された希望に飛びつかずにはいられない。 たとえそれがどんなに小さなものであっても、逆にどんなに荒唐無稽なものであっても。 これで暫くは大丈夫……希望を取り戻した騎士達を満足そうに眺め遣り、はやてはこれからの段取りを考え始める。 まずはシャッハを通じてカリムと連絡を取り、自分の出力限定を解除して貰う。 同時に機動六課に連絡、なのはと新人達を大至急こちらに向かわせる。 新人達の到着後はなのはの出力限定も解除、自分とフェイトとの三人で空の敵を一気に叩く。 大まかな流れを脳内で纏め上げ、はやては大きく深呼吸した。 大丈夫、自分ならばやれる……気合いを入れるように両手で頬を叩き、はやては顔を上げた。 周囲に散在する騎士達が、皆はやての顔を見つめている……行動開始の合図を待っているのだ。 いつから自分はこいつらの親玉になったのだろうか……絶対的な信頼と共に自分に向けられる騎士達の視線に、はやては照れたように頬を?いた。 越権行為で後で始末書確定だなーという後ろ向きな思考は取り敢えず心のゴミ箱に放り込み、はやては表情を引き締めた。 「皆……気合い入れていこーか!!」 えいえいおー……元気良く拳を天に突き上げるはやてに、騎士達は雄叫びで応えた。 (あのー、はやて? 凄く盛り上がってるところに水を差すようでとてもとても恐縮なんだけど……) 困ったような、物凄く困ったような声色で、フェイトが念話で話しかけてきた。 (――さっきグリフィスから連絡が入ったんだけど……なのは達はもう別件で出撃しちゃってるんだって) 唐突に聞かされたフェイトの爆弾発言に、はやての時間は凍りついた。 (……ごめんフェイトちゃん、何やウチ居眠りしとったみたいや。悪いけどもう一度言ってくれんかな?) ぎこちない口調でそう問いかけるはやてにフェイトは嘆息し、グリフィスから伝えられた内容を親切丁寧に話し始めた。 (ミッドチルダ東部の山岳地帯を運行するリニアレールが謎の魔導機械に襲われたって、管理局に通報が入ったのは発端。 その後ムガンまで現れたらしくて、本部は機動六課に出動を要請……ついさっき、なのはが新人をつれて出撃したんだって。 はやての通信機に幾ら掛けても繋がらないからって、私の方に回ってきたんだけど……) 今度こそ、はやての時間は止まった。 そう言えば演説中に何かがピコピコ鳴ってたよーなとか最初にムガン出現の連絡は入れたけどなのはちゃんたちが出張る必要なしと出撃突っぱねたんだったとか、 思い起こせば続々と出てくる若さ故の過ちという名の失態に思わず頭を抱えたくなるはやてだったが、全てはもう後の祭りである。 始末書やー首切りやーとゆーかウチら生きて帰れるんやろかーと、この世の終わりにように呻くはやての思念が、念話の回線越しにフェイトの頭の中に叩きつけられる。 (一応六課にはシャマルとザフィーラがいるし、リインも何故か残ってるみたいなんだけど……) ――輸送ヘリもなのは達運ぶのに使用中だから、人はいるけど足が無い……非情な現実に打ちのめされるはやてに、フェイトは追い討ちをかけるように報告を続ける。 そして……、 (つまり私達、絶対絶命ってことだね) これがトドメだった。 (う……) (う?) (うわぁああああああああああん! ウチの馬鹿馬鹿馬鹿あああああああああっ!!) 過酷過ぎる現実に理性が決壊したのか、子供のように泣き叫ぶはやて。 しかしその慟哭はあくまで念話越の中だけ――つまり妄想の範囲内――に収まり、現実のはやては何事もないかのように平然と騎士達を煽っている。 本音と建前がここまで乖離しているのも珍しいものだと妙なところで感心しながら、フェイトはムガン群へと視線を戻す。 機動六課は、なのは達は助けに来ない……ならば自分達で、何とかするしかない。 絶望的な戦いが、始まろうとしていた。 天元突破リリカルなのはSpiral 第8話「騎士はやて……貴女は、卑怯だ……!」(了) 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/52.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第23話【Stars Strike】 ティアナ「地上でも空でも、分断されたままの絶望的な状況。だけど、ずっと傍にいてくれたあの子の馬鹿みたいな 優しさと、出来の悪い私に一生懸命、技と力を叩き込んでくれたあの人の教えが、私に、立って戦えって言ってる。 誰にも負けないって言ってくれた言葉を、積み重ねてきた時間を。信じた未来を、夢のままで、終わらせないために」 ディエチ「あの小さな子の、お母さん、なんだっけ。あんたに恨みはないけど」 なのは「…っ、ブラスターシステム、リミット1!リリース!!」 レイジングハート「ブラスターセット」 なのは「ブラスター、シュート!!!」 ディエチ「うっ、抜き打ちで、この、威力」『こいつ、本当に人間か?』 なのは「じっとしてなさい。突入隊があなたを確保して、安全な場所まで護送してくれる。この船は、私たちが停止させる!」 なのは「…っ」 レイジングハート「master」 なのは「平気。ブラスター1はこのまま維持!急ぐよ、レイジングハート!」 レイジングハート「All right」 クアットロ「あはは、ははは。なんだ~。ブラスターシステム~なんて大仰な名前がついてるから、 どんなハイテクかと思ったら、バッカらしい。ねぇ陛下ぁ?あなたのママはそうとうおばかさんですよ~?」 クアットロ「いっらしゃ~い。お待ちしてました」 なのは「…っ」 クアットロ「こんなところまで無駄足ご苦労様。さて、各地のあなたのお仲間は大変なことになってますよ~」 なのは「大規模騒乱罪の現行犯であなたを逮捕します。すぐに騒乱の停止と武装の解除を」 クアットロ「仲間の危機と自分の子供のピンチにも、表情一つ変えないでお仕事ですかぁ?いいですね。 その悪魔じみた正義感」 クアットロ「で~も~、これでもまだ平静でいられます~?」 ヴィヴィオ「う、うあ、あ」 なのは「ヴィヴィオ!」 クアットロ「んっふ。いいこと教えてあげる。 あの日、ケースの中で眠ったまま輸送トラックとガジェットを破壊したのはこの子なの。 あの時あなたがようやく防いだディエチの砲、でも、たとえその直撃を受けたとしてもものともせずに生き残れた はずの能力。それが、古代ベルカ王族の固有スキル、『聖王の鎧』。レリックとの融合を経て、 この子はその力を完全に取り戻す。古代ベルカの王族が自らその身を作り変えたという究極の生体兵器。 レリックウエポンとしての力を」 ヴィヴィオ「ママーー!!!」 なのは「ヴィヴィオ!!」 ヴィヴィオ「!!ママ!!やだ~ママ!!」 なのは「ヴィヴィオ、ヴィヴィオ!!」 クアットロ「すぐに完成しますよ。私たちの王が。ゆりかごの力を得て、無限の力を振るう究極の戦士」 クアットロ「ほら陛下?いつまでも泣いてないで。陛下のママが助けて欲しいって泣いてます。 陛下のママを攫っていったこわ~い悪魔がそこにいます。 頑張ってそいつをやっつけて本当のママを助けてあげましょう?陛下の身体には、そのための力があるんですよ? 心のままに、思いのままにその力を解放して」 ヴィヴィオ「あなたは、ヴィヴィオのママを、どこかに攫った」 なのは「ヴィヴィオ、違うよ。私だよ!なのはママだよ!」 ヴィヴィオ「違う!」 なのは「!!」 ヴィヴィオ「うそつき。あなたなんか、ママじゃない!」 なのは「…っ」 ヴィヴィオ「ヴィヴィオのママを、返して!!」 なのは「ヴィヴィオ!!」 「レイジングハート!」 レイハー「W.A.S.フルドライビング」 クアットロ「さぁ、親子で仲良く、殺し合いを」 ヴィヴィオ「ママを、返してー!!」 なのは「ブラスター、リミット2!!」 ゲンヤ「市街地の防衛ラインは何とか持ちこたえてる。ガジェット共が相手なら、何とかならぁ」 グリフィス「はい!」 ゲンヤ「そっちの赤毛が鍛えてくれたうちの連中と航空隊の高町嬢ちゃんの教え子たちが最前線を張ってる。 だが、現状でギリギリだ。他に回せる余裕はねぇし、戦闘機人や召喚師に出てこられたら、 一気に崩されるかもしれねぇ」 シャーリー「戦闘機人五機と召喚師一味は、六課前線メンバーと交戦中です」 ゲンヤ「そうかい」 ティアナ『逃げ足も潰されて、カートリッジも魔力も、もう後ちょっと。頼みの綱の最後の一発勝負も、通用するかどうか』 「ほんとはさ。随分前から、気付いてたんだ。私はどんなに頑張っても、万能無敵の超一流になんてきっとなれない。 悔しくて、情けなくて、認めたくなくてね。それは今もあまり変わらないんだけど。だけど」 何だかいきなりスバルの回想シーンから始まったBパートですが、 マリエル「検査の結果、やはり間違いありません。ギンガもスバルも、二人とも、あなたと遺伝子形質が全く同じ。 あなたの遺伝子データがどこかで盗みだされて、使用されたんじゃないかと」 クイント「そう」 ギンガ「シューティングアーツの練習、スバルももっとちゃんとやればいいのに」 スバル「痛いのとか怖いの、嫌い」 スバル「自分が痛くて怖いのも嫌いだけど、誰かを痛くしたり、怖くしたりするのは、もっと嫌い。 私たちの身体、普通と違うんだし。壊したくないものまで壊しちゃうのは、怖いよ」 ギンガ「そっか。まぁ、スバルは強くなくてもいいのかな。お父さんとお母さんがいるし。私もいるから」 スバル「うん!」 なのは「そういえば、スバルが強くなりたい理由って、何なのかな?」 スバル「え?あ、やっぱりそれは、なのはさんに憧れて」 なのは「あっはは、それは嬉しいんだけど、そうじゃなくて」 スバル「え?」 なのは「強くなって、何をしたいのかなぁって」 マッハ「練習通りです」 スバル「え?マッハキャリバー?」 マッハ「まだ動けます、私も、あなたも。まだ戦えます。なのに、こんなところで終わる気ですか?」 マッハ「あなたが教えてくれた、私の生まれた理由、あなたの憧れる強さ。嘘にしないでください」 スバル「災害とか、争い事とか、そんなどうしようもない状況が起きたとき、苦しくて悲しくて助けてって泣いてる人を、 助けてあげられるようになりたいです。自分の力で、安全な場所まで、一直線に!」 なのは「あはっ」 スバル『戦うのとか、誰かを傷つけちゃうのとか、本当は何時も怖くて不安で、手が震える。 だけど、この手の力は壊すためじゃなく、守るための力。悲しい今を、打ち抜く力』 シャマル「あなたが地上戦の司令塔で、各地の結界担当。上手く隠れてたけど、クラールヴィントのセンサーからは、 逃げられない」 ザフィーラ「大規模騒乱罪、及び、先日の機動六課襲撃の容疑で!」 シャマル「逮捕します!」 ティアナ「あなたたちを、保護します。武装を、解除しなさい!」 レジアス「オーリス。おまえはもう下がれ」 オーリス「それは、あなたもです。あなたにはもう、指揮権限はありません。ここにいる意味はないはずです」 レジアス「わしは、ここにおらねばならんのだよ」 ゼスト「手荒いらいこうで済まんな、レジアス」 レジアス「かまわんよ、ゼスト」 オーリス「ゼスト、さん?」 アギト「ここから先は、通行止めだ!」 シグナム「おまえは」 アギト「旦那は、ひどいことなんかしねぇ!ただ、昔の友達と話をしたいだけなんだ! 旦那には、もう時間がねぇんだ!そいつを邪魔するってんならぁ!!」 シグナム「こちらはもとより事情を聞くのが目的だ。事件の根幹に関わることならば、尚更、聞かせてもらわねばならん」 ゼスト「オーリスは、おまえの副官か?」 レジアス「頭が切れる分、わがままでな。子供の頃から変わらぬ」 ゼスト「聞きたいことは、一つだけだ。八年前、俺と俺の部下たちを殺させたのは、おまえの指示で間違いないか? 共に語り合った、俺とおまえの正義は、今はどうなっている?」 次回予告 エリオ「消えない傷跡も、止まらない痛みも、逃げずにまっすぐに受け止めること。教えてもらったから。 だから、僕らは。次回、魔法少女リリカルなのはStrikers第24話、雷光。勇気を込めて、Take off!」
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/641.html
サージェスのサロンには菜月、蒼太、ヴィータ、シグナムの四人が揃っていたが、誰もが沈痛な顔で俯いている。口を開く者はいない。 山を降りてすぐに石化した少年は、映士の救急車ビークル、『ゴーゴーエイダー』によってサージェスの研究所に搬送された。 「真墨が子供を盾にして逃げるはずないよ!きっと何か理由があるもん!」 シグナム達に菜月はそう言った。 それは蒼太も同じだった。真墨は明石からチーフの地位を継いでから立派にミッションを遂行している。 明石とはスタイルが異なる彼だが、自分の為に子供を犠牲にするなどあるはずがない。 あるはずはないのだが――。 シグナムとヴィータは、確かにボウケンブラックが少年を盾にしたのを見たと言う。ボウケンブラックこと伊能真墨が。 だが、蒼太と菜月は、シグナムとヴィータが嘘を言っているとも思えなかった。菜月は純真さ故に二人を信じていたし、蒼太にとっても二人が嘘を吐くメリットが見当たらない。 彼女達はサージェスヨーロッパから来たと言われていた。サージェス程の組織が、ネガティブのスパイを見抜けないだろうか? そして何よりも大事なこと。それは蒼太も菜月も二人を信じたいのだ。 不思議なプレシャスの話に目を輝かせたヴィータを、自分だけの宝を探し求めていたシグナムを。彼女らの冒険への情熱を。 シグナムとヴィータもそれが解っている。二人の気持ちが解るから沈黙している。 でなければ、この場でボウケンジャーを厳しく糾弾していただろう。 シグナムとて、自分の目を疑ったくらいだ。 ボウケンジャーは自分の考えていたような連中ではなかった。彼等も人々を守る為に戦っているのだ。 そう、考え始めていたのに。 伊能真墨と高岡映士はまだ戻っていない。連絡も無かった。 結局は彼の口から語られるのを待つしかない。解っていながらも心の中では不安と疑念が渦巻き、焦燥感は膨れ上がっていくのだ。 それは伊能真墨が戻り、同時にMr.ボイスが叱責に現れるまで続いた。 ――命懸けの冒険に今日も旅立つ者がいる。 秘かに眠る危険な秘宝を守り抜く為に、あらゆる困難を乗り越え進む冒険者達―― 轟轟戦隊ボウケンジャーVS魔法少女リリカルなのは ExtraTask 03 新たなる冒険者 「たく、どうなってるんだろうなぁ……こりゃあ」 高岡映士は一人ごちた。それは研究所を出てすぐのこと。 真墨からは単独でジャリュウ一族――というより、邪悪竜バジークを先に追えと言われた。 「おい!俺様があいつらに言わなくていいのかよ!真墨!」 「必要無い。そんなことよりお前は奴を探しててくれ」 それを聞かされた時、映士はそれに逆らった。 彼はきっと、何も言い訳をしようとしないだろう。そういう男だ。 「けどよ!新入り共が――」 「いいんだよ、そんなことは!ともかくアイツはバジリスクの瞳の力を手に入れた。 俺は一度サージェス帰って対策を練るから、お前は先に行け。ただし一人では仕掛けるなよ」 「ちっ……わかったよ」 自分のことよりもミッション優先。いつの間にかチーフらしくなったものだ。 だが、映士はそんな真墨に明石暁には無かった危うさを感じずにはいられなかった。 明石はいつだって冒険を楽しむことを心の片隅に秘めていたから。 今の真墨にはそれがあるのだろうか――。 映士には、その後サージェスで繰り広げられる光景が容易に想像できた。 そしてもう一つ、ユーノ・スクライアの存在。 教えた寺に彼を追って行ってみたものの、寺にユーノの姿は無く住職の老人が一人眠らされているだけだった。 そして彼に教えたプレシャス――『百鬼夜行絵巻物』も奪われていた。 住職は薬で深く眠っていたので、彼を隠して先に孫の少年を探していたところで戦闘に出くわしたのだ。 「まさか……あいつが?」 そう考えると辻褄が合わなくもない。アシュを封印した神器を知りたがっていたことも怪しい。 それでも気に掛かる。アシュを知ったところであいつに何の得がある? それにあの神器はアシュを深く知る者にしか扱えない。 いや、それでも考え付く理由は幾らでも出る。疑問も疑念も尽きない。 「いや……そんなはずはねぇ」 それでも確かなことはある。彼もまた、未知の世界に瞳を輝かす者のはず。未知の術と聞いて、居ても立ってもいられずに駆け出した彼――。 「あれは……あの眼は"冒険者"の眼だ」 映士はそれを信じたかった。 「答えろ、伊能真墨!子供を盾にするのが貴様らの冒険か!」 シグナムが怒りを露わにして叫ぶ。最初に真墨に食って掛かったのは彼女だった。 「言った通りだ。俺は全員の撤退を確実にする為に、あの子供を盾にした。そんな事態を招いたのは俺のミスだ」 「そんな!嘘でしょ、真墨!?」 菜月が真墨の腕を掴んで揺さぶる。 と、背後からバンッ!と机を叩く音が聞こえた。 「……」 ヴィータが黙って真墨を睨んでいる。 真墨は何も語ろうとはしない。弁解をしないのはそれが真実だからなのか。 「そうか……。ならば、もう何も話すことはない……」 シグナムがそう言ってサロンを出て行く。声の冷静さに反してその表情は苦渋に満ちていた。 ――信じたかった。何か理由があるはずだと。子供を盾にするような外道ではないと。 「行くぞ、ヴィータ」 ヴィータも悔しそうに歯を噛み締めていた。シグナムと一緒にサロンを去る彼女は最後に一度、菜月を哀しそうに振り返った。 薄暗い遺跡の中、鶏冠に似た襞を頭に付けた邪悪竜が暗闇に向かって話しかける。 「貴様の言う通りにバジリスクの瞳を手に入れた。しかし……」 その眼は金色の光を放っていた。 「貴様は俺にこんなものの在り処を教えて、何が目的だ?確かに貴様には世話になった。だがジャリュウ一族の復活に手を貸して、貴様に何の得がある?」 暗闇から声が響く。重く低く、しかしはっきりと通った声だ。 「勿論、私にも得はある。私の目的はサージェスやボウケンジャーなど問題にならない程大きいのだ。君達の手で彼らを始末してもらえると私もそれに専念できる。これは相互利益の為なのだよ」 バジークは表情が読み取りにくい爬虫類めいた顔を、それでも明らかに不快そうに歪めた。 こいつはジャリュウ一族を駒程度に思っているのだ。そしてリュウオーン亡き後、ジャリュウ一族を統べるべきである自分を。 「それを信用しろというなら、顔くらい見せたらどうだ?」 「せっかくだが、君の瞳に見つめられるのは少々気恥ずかしいのでね。今は信用してくれとしか言えない。」 バジークは憎憎しげに眼を輝かせる。金色の魔眼を以ってしても、見えない相手を見ることはできない。 この声と対するのは初めてではなかった。ふざけた受け答えに、最初はその暗闇に踏み込んでやろうと思っていた。 だが、暗闇の先に歩を進める度に背中を怖気が走る。 ――危険だ。ジャリュウとしての本能が、この身に宿るバジリスクが全力で警鐘を鳴らしてくる。 結局、それ以上は進むことができなかった。 「いいだろう。貴様の言うとおりにするのは癪だが、俺がボウケンジャーに引導を渡してきてやる。ただし――」 バジークは背を向けて歩き出す。 「それが済めばその顔を拝ませてもらうぞ」 捨て台詞を吐きながら、やがてバジークの姿が完全に見えなくなる。 「自分を作った者が誰かも知らずにいい気なものだ」 暗闇の声は誰にともなく呟く。 「管理局も異変を察知して動き出したか……」 百鬼界がこじ開けられようとしているなら、この世界に目をつけるのは当然。 それでも派遣した捜査員が二人程度ならば、奴等はまだ何も掴んでいないのだ。 「まぁいい。無能な管理局に何ができる……。ガイやレイを倒したとはいえボウケンジャーも辺境の猿に過ぎない」 暗闇から溢れた笑い声が、誰もいない空間に谺した。 サージェスを飛び出したものの、行く当てのあるはずもない。ヴィータとシグナムはとぼとぼと街を歩いていた。 「なあ、シグナム……。どうしてはやてはあたし達を選んだんだ?」 もう何度目になるだろう。何度も何度も自問自答を繰り返した。 それでも答えは出なかった。ずっと考えていると、そのうちに不安と迷いが湧いてきて――。 今また口に出して尋ねてしまった。 武装隊としての任務しかしたことのない自分達を、捜査官である主が潜入捜査に選んだその意味を。 「さあな……」 訊いたところで彼女にもわかるはずなどないことは解っていた。 ボウケンジャーとして行動していれば必ずアシュと百鬼界に繋がるはずだ。 そうはやては言っていた。 おそらくはやても調査の任に当たっているのだろう。 かつて管理局の協力もあって高岡一族がようやく次元の狭間に封印したアシュ。たった数人でさえボウケンジャーを苦戦させた化物が溢れ出そうとしている。 それなのに、本当に自分達はこんなところにいていいのだろうか? 数年前に自分達は主はやてを守り、主と共に生きると誓った。その想いは少しも変わっていない。 嘱託魔導士となってからは任務で一緒にいる時間は少なくなったが、それを苦に感じたこともほとんどなかった。今の主に常にべったりと付いて守る必要も無いし、離れていても家族であることに変わりはない。 それに嘱託になれば主の罪も軽減されるし、彼女の「ロストロギアの悪用を防ぎたい」という想いを守りたかった。 そう思えたから管理局の仕事にも誇りを感じられたのだ。何よりも、それはシグナムを含む守護騎士全ての総意でもあった。 だが、今はどうだろうか? 主の下を離れ、突然サージェスに放り込まれ、ボウケンジャーとなった。 短期間で訓練をこなし、知識を身に付けても、結局は何もできずプレシャスを奪われた。それだけでなく、一人の少年の命を今も危機に晒している。 あの時の真墨に対する怒りは、無力な自分への怒りでもあったのかもしれない。 真墨の行動は腑に落ちない。それでも、それに救われたのもまた事実なのだ。 自分自身、それが一番許せなかった。 「魔法を使うことができれば……」 ――せめて魔法が使えれば。 シグナムが呟いた言葉はヴィータにも届いた。 確かに魔法を使うことができれば、あの時遅れを取ることもなかった。少年を危険に晒すこともなかっただろう。だが、 「それができりゃあ最初からやってるさ……」 これは潜入任務だ。あくまでサージェス・ヨーロッパからの命令で派遣された新人を装わねばならない。 誰が、何の目的で百鬼界を開こうとしているのかわからないのだ。魔力反応が伝われば管理局が関わっていることを知られてしまう。 それに、管理局はサージェスにも完全に気を許した訳でもないらしい。この世界のプレシャスの大半を掌握している上に、高岡映士もいる。云わば最もアシュに詳しい組織だ。 協力を要請する為に一部の者は真実を知っているが、どこから情報が漏洩するかわからない。はやてからも固く禁じられていた。 自分の本来の姿で戦うこともできず、信頼できる仲間もいない。 はやてを補佐することもできない。 かといって、任務を放棄することなどできるはずもない。そんなことをすればはやてが責任を問われ、何よりもはやての信頼を裏切ることになってしまう。 「あたし達は――」 ――どうすればいい。 多分そう言おうとしたのだろうが、ヴィータの言葉は腕のアクセルラーへの通信によって遮られた。 通信から聞こえてきたのは牧野博士の声。 「ジャリュウ一族が街を破壊しています!君達の位置が一番近い。すぐに向って下さい!」 「いや、私は――」 何か言おうとしたシグナムだったが、有無を言わせず牧野は必要事項のみを伝え、通信を終了させてしまった。 ――私は何を言おうとしたのだろうか……。 考える間もなく遠くから爆音が響いてきた。続いて次々に近づいてくる悲鳴。 瞬間、シグナムとヴィータの身体が反応する。目線を落とすと、二人の足は自然と爆発の方向へと向いていた。 ――ああ、そうか……。 自分が大事なことを忘れていたことに気付く。 サージェスが何者であろうと、管理局の意向がどうであろうと――。 自分達が迷おうと、迷うまいと――。 プレシャスを奪ったネガティブは今、街を壊し、誰かを傷つけているのだ。 今はわからないことばかりでも、為すべきことは身体が知っている。 後はそれに従うのみ。 「行くぞ!ヴィータ!」 言うが早いか爆音に向かって駆け出す。 「おうっ!」 答える彼女も既にシグナムの横を走っている。 ――きっと主が我々に望んだ在り方とは、たとえ主から離れようとも、騎士として魔法を行使することを封じられたとしても! ――その程度のことで存在意義を見失うようなものではないはず!『力』を失ってしまうようなものではないはずだ! ここは主と家族が住む世界。それを壊す者とは戦わなければならない。 それは任務ではなく、使命であり誓い。 そして自分達は、今はまだボウケンレッドでありボウケンピンクなのだ。それを果たさなくては、 そしてそう在る理由を見出さなければ彼女に会わせる顔がない。 二人はアクセルラーを握り締め、走りながら力強く左腕を突き出す。 「レディ!」 肩から突き出した拳に向けてアクセルラーのタービンを滑らせる。 「ボウケンジャー、スタートアップ!!」 眩い光に包まれ、アクセルスーツの胸にボウケンジャーのエンブレムであるコンパスが刻まれる。 それは彼女達の行くべき道を指し示しているようだった。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2293.html
ロングアーチ――はやてが部隊長を務める、機動六課の後方支援部隊である。 補給や索敵、人員輸送などを主な任務とし、前線部隊を影から支える大黒柱として組織されたこの部隊の初陣は、皮肉にも自分達自身が前線に出るという形で始まった。 『カートリッジロード! 一番槍いきまーす!!』 シャリオの掛け声と共にダヤッカイザーの頭の大砲から、ドラム缶のように巨大な空薬莢が排出され、同時に砲口正面に魔方陣を展開――砲撃魔法が発動する。 放たれた光の奔流がムガンを呑み込み、敵の群れに風穴を開けた。 『今の砲撃で敵勢力の5.7%が消滅、誘爆により尚も減少を続けています』 『砲身冷却までの推定所要時間十五秒、二十秒後には第二射撃てます』 ダヤッカイザーに乗るシャリオにそう報告しながら、アルトとルキノ――ツインボークンが前に出た。 『ターゲットロックオン!』 『スピンバリアー弾発射!!』 ツインボークンの両掌からドリル型の弾丸――スピンバリアー弾が射出され、ムガンを撃ち抜いていく。 その間にダヤッカイザーの砲身冷却が完了、カートリッジ装填と共に砲撃の第二射が放たれた。 再び空を貫く光の奔流と並走するように翔る一つの影がある――グリフィスの駆るエンキドゥだった。 単身ムガン群に突入したエンキドゥが頭のトサカを取り外し、ブーメランのように投擲した。 円のような軌跡を描いて飛ぶトサカ――エンキラッガーがムガンを切り裂き、再び主の手の中に戻る。 トサカを頭に装着し直したエンキドゥは、今度は左右の腰の刀を引き抜いた。 『カートリッジロード!!』 グリフィスの怒号と共に刀身の付け根から空薬莢は排出され、鞘を被せたように鋼の刀身の外側に魔力刃が生成される。 魔力刃によって延長した二本の刀を我武者羅に振るい、エンキドゥはムガンの群れの中を飛び回った。 ガンメン――かつてこの世界とは違う次元、違う宇宙において、対アンチスパイラル用に開発運用された大型質量兵器。 時空管理局の魔法技術を応用し、魔導兵器として再設計されたガンメンを駆り、若者達は戦う――自分達の長、はやてを完全に置き去りにして。 「こらぁーっ! お前らウチを無視するなぁーっ!!」 部隊長である自分の指示を仰ごうともせず、好き勝手に戦い始めるガンメン軍団に、はやては拳を振り上げ怒号を上げる。 助けにきてくれたことは素直に感謝するが、しかしそれとこれとは別問題である。 傲慢な言い方になるが、ロングアーチは自分の部隊なのた――自分は部隊を指揮しなければならないし、グリフィス達は自分の言うことを聞かなければならない。 それが指揮官としての自分の責任であり、部下としてのグリフィス達の義務なのだ。 機動六課――ロングアーチも組織である以上、そのけじめは果たさなければならない。 そして何より――これが本音なのだが――部隊長の自分を差し置いて活躍するガンメン軍団に、はやては嫉妬していた、対抗心を燃やしていた。 「リイン、ウチらも征くで! シャーリーやグリフィス君達だけにええ格好はさせへん!!」 胸に抱いたリインフォースⅡを解放し、はやては昂然と言い放った。 新参者共にこれ以上出番を喰われてなるものか……リインフォースⅡを見下ろすはやての瞳の奥で、熱い炎が燃えている。 「イエス、マイスターはやて!」 笑顔で首肯するリインフォースⅡの身体が光に変わり、はやての身体の中へと吸収される。 ユニゾン――術者とデバイスが文字通り一心同体となり、魔力や戦闘能力を爆発的に上昇させる融合能力。 ラゼンガン――或いは同タイプのグレンラガン――の合体が気合いと気合いのぶつかり合いならば、はやて達のユニゾンは思いと想いのぶつかり合いである。 ユニゾンの影響で白金色に変わった髪を風に遊ばせ、翡翠色に染まる瞳を煌かせ、胸の奥で鼓動するリインフォースⅡの心を感じながら、はやてはデバイスを構える。 右手に握る騎士杖型アームドデバイス――シュベルトクロイツ。 左手で開く魔導書型ストレージデバイス――夜天の書。 ユニゾンの際に同時に融合したもう一つの魔導書型デバイス――蒼天の書。 そしてその全てを統制する管制人格――リインフォースⅡ。 四つのデバイスを同時に扱い、圧倒的な攻撃力で戦場そのものを消し飛ばす……それがはやての真の戦闘スタイルである。 若いな……見せ場の奪還に燃えるはやてをモニターの端に見遣りながら、ロージェノムは唇の端を持ち上げる。 かつて、今のはやてと同じ眼をした男と出会った。 そしてロージェノム自身もまた、同じように身と心を戦いに燃やした経験がある。 言葉や理性では抑えられない熱い衝動――螺旋の本能。 はやてもその存在を認知してはいるが、己の内から迸るその衝動こそが螺旋の力に他ならないということには、未だ気付いてはいないだろう。 「ロージェノムさん! デカい呪文で一気に叩くから、詠唱の間ウチを守って!!」 はやての命令にロージェノムは不敵な笑みを浮かべ、「是」と応えた。 グラパールが盾となるようにはやての前に仁王立ちし、腕組みしてムガン群を見据える、 ムガンのビームが雨のように撃ち込まれるが、グラパールの展開したバリアに阻まれはやて達までは届かない。 「ふん……」 歯応えの無い敵の攻撃にロージェノムは退屈そうに鼻を鳴らし、自分達を守るバリアを解除した。 迫り来るビームの雨にグラパールは腕組みを解き、右腕をギガドリルに変形させる。 前方に突き出されたギガドリルの先端から更に五本の細長いドリルが指のように突き出し、ムガンのビームを鷲掴みした。 ビームのエネルギーがドリルの「腕」と吸収一体化し、巨大な光球となってグラパールの掌の上で暴れ回る。 『返すぞ』 荒れ狂い爆発寸前のエネルギー塊を、グラパールはムガン群へと投げ返した。 ムガン爆発の連鎖による炎の帯が空に広がる中、はやての呪文が完成した。 「詠唱完了、皆逃げろぉーっ!!」 念話、通信、そして肉声と、あらゆる手段で伝えられるはやての退避勧告に、ガンメン軍団が慌てたようにムガン群から遠ざかる。 最後の一体――ムガン群の中心に斬り込んでいたエンキドゥ――の退避を見届け、はやては魔法を起動した。 「遠き地にて沈め……デアボリックエミッション!!」 はやての咆哮と共に、暗黒の光が周囲の空間ごとムガン群を呑み込んだ。 はやての放った広域攻撃魔法によって空の敵は全滅し、地上の小型ムガンは教会騎士団が全て片付けた。 静けさを取り戻した戦場に、山の向こう側から一機の輸送ヘリが姿を現す。 グリフィスの派遣した交替部隊である。 「へ? こ、交替部隊……?」 交替部隊到着の報告をグリフィスから受け、はやては思わず声を上擦らせた。 「交替部隊……?」 胡散そうな視線を向けるフェイトに、はやては乾いた笑みを浮かべる。 「あははははー。……すっかり忘れとったわ」 「しっかりしてよ部隊長!?」 てへっと可愛らしく首を傾げて誤魔化すはやてに、フェイトが魂の叫びを上げる。 「しゃ、しゃーないやろ! 交替部隊って半分グリフィス君の私兵みたいなもんやし、あん時はウチも冗談抜きでテンパっとったし……」 逆上したように顔を紅潮させながら弁明するはやてだが、容赦なく突き刺さるフェイトの絶対零度の視線を前に言い訳の声は次第に小さくなっていき、 「もーしわけありませんでした!!」 ……最終的に、はやてはフェイトの前に土下座して謝っていた。 部隊長としての威厳の欠片もない親友の姿に、フェイトは呆れたように息を吐く。 その時、 「上に立つ人間が、そんな風に軽々しく頭を下げたりするものではないわよ? はやて」 穏やかな女性の声が、はやての背中にかけられた。 「カリム!?」 「久しぶりね、はやて。リインも元気そうね」 顔を上げ、満面の笑顔を浮かべて振り返るはやてに、声の主――カリム・グラシアも柔和な笑みを返す。 「そちらの方は初めてお会いするわね。聖王教会騎士、カリム・グラシアです」 「機動六課ライトニング隊隊長、フェイト・T・ハラオウンです」 フェイトとの自己紹介を簡潔に済ませ、カリムははやてへと向き直る。 「部隊の方は順調みたいね。今回は助かったわ」 騎士団と共に現場検証や負傷者の救助作業を行う交替部隊の隊員達、そして瓦礫の撤去作業を行うガンメン達を好意的に評価するカリムに、はやての笑顔が固まった。 言えない、今回獅子奮迅の活躍を見せたガンメン軍団の中の人が、実は前線部隊でも何でもないただの内勤スタッフであるなどとは絶対に言えない……。 「そ、それより……今回カリムがウチと会って話そ思うとったんは何なんや?」 慌てたように話題を変えたはやての問いに、カリムの顔から笑みが消えた。 「そうね……早速だけど、本題に入りましょうか」 そう言ってカリムは傍らの騎士に合図し、何かのケースを受け取った。 「昨日の深夜――日付は今日に変わっていたかしら――教会礼拝堂を清掃していた修道士が、長椅子の陰に隠すように置かれていたこれを見つけたの」 そう言ってカリムが差し出した金属製のケースに、はやてとフェイトは瞠目したように同時に声を上げた。 「「レリック!?」」 第一級捜索指定ロストロギア、レリック。 ロストロギア――様々な世界で生じたオーバーテクノロジーの内、消滅した世界や古代文明を歴史に持つ世界において発見される、危険度の高い古代遺産。 レリックもその一つである。 外観はただの宝石だが、古代文明時代に何らかの目的で作成された超高エネルギー結晶体であることが判明している。 レリックは過去に四度発見され、その度にムガンの出現が確認されている。 そして、今回の事件が五度目。 アンチスパイラルがレリックを狙う理由は未だ解明されていないが、レリックの放出するエネルギーを螺旋力と誤認してムガンが出現するという仮説が有力である。 思わず息を呑む二人に、しかしカリムは首を振り、ケースに掛けられたロックを解除する。 「……イエスとも言えるし、ノーとも言えるわ」 カリムの返答と共に開けられたケースの中身に、二人は驚愕を隠せなかった。 通常レリックを安置する台座が納められている筈のケースの内側いっぱいに、複雑な機械と回路が詰め込まれ、配線が血管のように張り巡らされている。 明らかに何者かの細工の施された、変わり果てたレリックケース――しかし二人の驚愕した理由は、それだけではなかった。 回路の心臓部に搭載されている二つのロストロギア――片方は動力部に設置されたレリック、そしてもう一つは……。 「これ、コアドリル……?」 困惑したようにはやてがケースの中に手を突っ込み、スイッチのように差し込まれていた小さなドリル――コアドリルを引き抜いた。 稼動していた機械が動きを止め、発光していたレリックも徐々に光を失っていく。 コアドリルもまたロストロギアに登録され、ムガンはこれを破壊するために動いている。 機動六課が追う二つのロストロギア、その二つともを積み込んだ謎の機械……理解を超えた事態に、はやて達は思わず顔を見合わせた。 「……カリム、正直これはウチらだけには荷が重過ぎる。幸い、これの専門家が今ここに来とるから、その人にも見て貰ってええかな?」 カリムにそう提案し、はやてはロージェノムへと通信を繋いだ。 「ロージェノムさん……ちょっとええかな?」 はやての召喚を受けて、独りガンメンを降りて救助作業に参加していた巨漢――ロージェノムが三人の元へと足を運ぶ。 「……これは一種の永久機関だな」 はやてから手渡されたケースをためつすがめつ観察し、やがてロージェノムはそう結論を下した。 「レリックのエネルギーをコアドリルが増幅し、そして再びレリックの中へと戻す――それ以外には何の機能も無い。 増幅したエネルギーの殆どは機械部分の稼動に回され、機構外部への仕事は機械部分の廃熱と余剰エネルギーの漏出以外には一切存在しない。 コアドリルのエネルギー増幅率も必要最低限に抑えられ、ほぼ完全にこのケースの中だけで完結したエネルギー循環機構だ」 「そんなものに、一体何の意味があるんですか……?」 フェイトの口にした疑問の言葉に、ロージェノムはつまらなそうに鼻を鳴らした。 「何の意味も無いだろうな。精々……ムガンを無限に呼び寄せる程度だ」 ロージェノムの答えに、三人の顔は戦慄に凍りついた。 そのためだったのか……無意識の内に、フェイトは拳を握り締めていた。 あの執拗なまでに続いたムガンの増援はこれが原因だったのか……! ケース中央、回路の心臓部付近に、一枚の金属プレートが貼られている。 プレートに彫られた製作者の名前、銘を入れるように刻印されたその名は……。 「ジェイル・スカリエッティ……!」 風の中に消えたフェイトの呟きは、憎悪と憤怒に染まっていた。 荘厳――この場所以上にその言葉の相応しい場所が、果たしてこの世に存在するだろうか。 豪華な装飾の施された支柱の立ち並ぶ、巨大な金色の空間。 まるで玉座の間のように絢爛に飾り立てられた広間は、しかし中央に展開された巨大なウィンドウによって、その荘厳な雰囲気を台無しにされている。 ウィンドウに映し出される映像は二つ――片方はなのは達を乗せて飛ぶ輸送ヘリ、もう片方は火の手の収まりつつあるベルカ自治領。 機動六課の動く二つの現場を映したウィンドウを食い入るように見つめる、白衣を着た一人の男がいる。 しなやかな細身の身体、長い黒髪、中性的な細面、そして金色の瞳――男を構成するパーツの一つ一つが絶妙なバランスで調和し合い、異形の美しさを形成している。 そう、男は人の形をした異形だった。 数々の禁断の知識をその身に修め、己の欲望を満たすためならば如何なる犠牲も辞さない外道。 生まれながらに罪を背負い、業に塗れたその両手で幾つもの未来を破壊し、そして創造してきた天才。 男の真実を識る者は、畏怖を込めてこう呼ぶ――〝無限の欲望〟と。 男の傍らにウィンドウがもう一枚開き、妙齢の女性の顔が映し出される。 『ベルカ自治領市街地のムガン全滅、ムガン発生装置も稼動を停止した模様です』 「見ていたよ、ウーノ」 ウィンドウの女性――ウーノの顔を横目で見遣り、男はその報告に首肯を返す。 『よろしいのですか、ドクター? これで刻印ナンバー9並びに刻印ナンバー44のレリック、それにコアドリルが管理局の手に落ちてしまいましたが……』 「別に構わんよ、そのおかげで面白いデータが手に入った」 ウーノの問いに涼しい顔で即答し、ドクターと呼ばれた男は正面の巨大ウィンドウに視線を戻した。 「それにしても、この案件はやはり素晴らしい……。私の研究にとって興味深い素材が揃っている」 ウィンドウの映像が切り替わり、機動六課前線部隊の内の三人――スバル、エリオ、そしてフェイト――の戦闘映像が映し出された。 三人ともその出生には、男の過去の研究と浅からぬ因縁がある。 それに……男は更に画面を切り替え、二つの戦闘映像を表示させた。 ベルカ自治領市街地上空を縦横無尽に飛び回る鋼の巨人達――ガンメン。 仮初の街を駆け回る漆黒の巨人、ガンメンのオリジナル――ラゼンガン。 「私以外に螺旋の力を、それも私以上に深く識る者がいるとは……」 氷のような笑みを顔に貼り付け、魅入ったように恍惚とした声音で男が呟く。 螺旋の力――それは人という種が秘めた無限の可能性、そして世界をも滅ぼす魔の力。 「足掻いてみせろ抗ってみせろ……螺旋の戦士達よ」 憎むように愛おしむようにウィンドウの中の巨人達にそう語りかけ、男――ジェイル・スカリエッティは高らかに哄笑を上げる。 金色の瞳の奥で、炎が回っている、光が巡っている――ロージェノムと同じ螺旋の輝きを、宿していた。 天元突破リリカルなのはSpiral 第10話「ジェイル・スカリエッティ……!」(了) ところで――、 「え゛!? み、皆仕事放り出して来てもーたの!?」 ロングアーチ出撃の裏の真実を聞き、はやては引き攣らせた。 「はやてさん達が心配でいてもたってもいられなくて、なのはさん達に必要最低限の指示だけ出して、他は全部丸投げして飛び出して来ちゃいました」 「現場放棄に無断出撃、それに任務管轄外の越権行為……どんな処分でも受ける所存です」 シャリオはあははーと誤魔化すように笑い、固い表情で部隊長の返答を待つグリフィスに、はやては思わず天を仰いだ。 なまじ善意で動いてくれたので、怒るに怒れない……。 平穏を取り戻したベルカ自治領の空は、どこまでも高く、広く、そして青かった。 己の過失に加えて部下の監督不行き届き……洒落にならない失態の連続に、はやては絶望したようにこう呟く。 「か、神はどこまでウチを試すん……」 全部お前に自業自得だろうというツッコミを喉の奥に留め、フェイトは諦めたように嘆息を零す。 街のどこかで、鴉がアホウアホウと鳴いていた。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/44.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第14話【Mothers&Children】 なのは「一人ぼっちの切なさと、普通と違うことの寂しさ。きっと、皆知っている。 大切な人がいて、色んなものを分け合えて、支えてもらったから…私は今ここにいる。 だけど、魔法の力以外で、戦うこと以外で、私は何ができるんだろう。行き場のない小さな瞳に、 私は…どう答えればいいんだろう。魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 なのは「今日は目立ったミスもなく、いい感じでした。今後も、この調子でね」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「ありがとうございました!」 スバル「セカンドモードも、だいぶ馴染んできたかなぁ~」 キャロ「そうですね~」 スバル「変化の少ない私とキャロはともかく、ティアとエリオは大変そうだよね~」 キャロ「形から変わっちゃいますし」 ティアナ「あたしは、別に。ダガーモードはあくまで補助だしね」 クロスミラージュ『Yes』 ティアナ「複雑なのはエリオのほうでしょ」 スバル「ストラーダのセカンド。過激だもんね」 ストラーダ『そうでしょうか』 キャロ「私はかっこいいと思うよ、ストラーダ」 ストラーダ『ありがとうございます、レディ』 エリオ「ストラーダと一緒に鍛えていきます。頑張ります!」 なのは「おはよう、ヴィヴィオ。ちゃんと起きられた?」 ヴィヴィオ「うん!」 なのは「おはよう、フェイトちゃん」 フェイト「うん。おはよう、なのは。ヴィヴィオ、なのはさんにおはようって」 ヴィヴィオ「おはよー」 なのは「…おはよう」 フェイト「朝ごはん、一緒に食べられるでしょ?」 なのは「うん!」 ヴィヴィオ「あさごはん?」 なのは「そう。さ、いこっ。…今日のメニューは何だろうね~」 はやて「いやぁ~実はな。今日これから本局に行くんやけど、よかったらティアナも一緒に来とくか?って相談や」 ティアナ「あ…はい」 はやて「今日会う人は、フェイト隊長のお兄さん。クロノ・ハラオウン提督なんよ」 ティアナ「はい」 はやて「執務官資格持ちの艦船艦長さん。将来の為にもそういう偉い人の前に出る経験とか、しといたほうがええかなって」 ティアナ「! ありがとうございます!同行させていただきます!」 なのは「あれ?ティアナは?」 スバル「八神部隊長と同行だそうです。本局行きとか」 なのは「そっか」 スバル「なのはさんも、今日はオフィスですか?」 なのは「そうだよ。ライトニングは今日も現場調査だし、副隊長たちはオフシフトだし、 前線メンバーは私とスバルの二人だけだね」 スバル「…あはは…。何も起きないことを祈ります」 ヴェロッサ「しかし、君の依頼通り、内密で地上本部の中身…ゲイズ中将の周りを調べてみたけど…。 なんというか。本当に面白いくらい、豪腕な政略家だよね」 クロノ「実力者であり、人を惹きつける牽引力もある。優秀な方だとは思う」 ヴェロッサ「本部長からして、彼の後輩だしね」 クロノ「黒い噂が絶えないとはいえ、彼が地上の正義の守護者であるのも事実だ」 ヴェロッサ「企業や政界からの支援も山ほどあり、管理局最高評議会の覚えもめでたい。 こりゃ、確かに、本局としちゃ、扱いの難しい人物だ」 クロノ「そう。うかつな介入はできない。ただでさえ、海と陸。本局と地上本部はことあるごとに仕事…」 クロノ「臨時査察を受けたそうだが、大丈夫だったか?」 はやて「うん。即時査問は回避できたよ。あ、そや。紹介しとくな。うちのフォワードリーダー、執務官志望の…」 ティアナ「ティアナ・ランスター二等陸士であります!」 クロノ「ああ」 ヴェロッサ「よろしく~」 クロノ『前線メンバーにまで、今回の全容を?』 はやて『予言関連はぼかしてあるよ。地上本部が襲われる可能性だけ』 クロノ『なるほどね』 キャロ「テロ行為って…地上本部にですか?」 フェイト「まぁ、そういう可能性がある、って程度だけどね」 エリオ「でも、確かに…管理局施設の魔法防御は鉄壁ですけど、ガジェットを使えば…」 フェイト「そう。管理局法では、質量兵器保有は禁止だからね。対処しづらい」 キャロ「しつりょうへいき?」 フェイト「ああ。おおざっぱに言えば、魔力を使わない物理兵器…でいいのかな。質量物質を飛ばしてぶつけたり、 爆発させたり、先史時代のミッドや古代ベルカは、そういう兵器がほとんどだったの」 エリオ「聞いたことあります。一度作ってしまえば、子供でも使えるとか。指先一つで都市や世界を滅ぼしたりとか」 フェイト「そう。管理局は創設以来、平和のため、安全のためにそういう武装を根絶して、 ロストロギアの使用も規制し始めた。それが、150年くらい前。でも、色んな意味で武力は必要。さて、どうしたでしょう?」 エリオ「あ。比較的クリーンで安全な力として、魔法文化が推奨されました」 キャロ「うん、うん」 フェイト「正解。魔法の力を有効に使って、管理局システムは今の形で各世界の管理を始めた。 各世界が浮かぶ海、次元空間に本局。発祥の地、ミッドチルダに地上本部を置いて」 キャロ「あ~!それが新暦の始まり。75年前」 フェイト「そう。で、新暦前後の一番混乱してた時期に管理局を切り盛りして、 今の平和を作るきっかけになったのが…?」 エリオ「かの、三提督」 キャロ「はぁ~」 エリオ「なるほど~」 フェイト「と、世界の歴史はおいといて」 キャロ「あ、すみません」 フェイト「ガジェットが出てくるようなら、レリック事件以外でも六課が出動になるからねってこと。しっかりやろうね」 エリキャロ「はい!」 フェイト『本当は、エリオとキャロにはもっと平和で、安全な道に進んで欲しかったんだけど』 カリム「情報源が不確定ということもありますが。管理局崩壊ということ自体が、現状ではありえない話ですから」 はやて「そもそも。地上本部がテロやクーデターにあったとして、それがきっかけで本局まで崩壊…… いうんは、考えづらいしなぁ」 クロノ「まぁ、本局でも警戒強化はしてるんだがな」 カリム「問題は、地上本部なんです」 クロノ「ゲイズ中将は予言そのものを信用しておられない。特別な対策はとらないそうだ」 カリム「異なる組織同士が協力し合うのは、難しいことです」 クロノ「協力の申請も内政干渉や強制介入という言葉に言い換えられれば、即座に、諍いの種になる」 はやて「ただでさえ、ミッド地上本部の武力や発言力の強さは問題視されてるしなぁ」 フェイト「だから、表立っての主力投入はできない、と」 クロノ「すまないなぁ。政治的な話は現場には関係なしとしたいんだが」 はやて「裏技気味でも、地上で自由に動ける部隊が必要やった。レリック事件だけで事がすめばよし、 大きな事態に繋がっていくようなら、最前線で事態の推移を見守って」 なのは「地上本部が本腰を入れ始めるか、本局と教会の主力投入まで、前線で頑張ると」 はやて「それが、六課の意義や」 なのフェイ「うん」 カリム「もちろん、皆さんに任務外のご迷惑をおかけしません」 フェイト「ああ、それは大丈夫です」 なのは「部隊員たちへの配慮は、八神二佐から確約を得てますし」 カリム「はい。改めて、聖王教会騎士団騎士、カリム・グラシアからお願いいたします。 華々しくもなく、危険も伴う任務ですが、協力を、していただけますか?」 なのは「非才の身ですが、全力にて」 フェイト「承ります」 フェイト『地上と海の平和と安全。この子達も含めた部隊の皆の安全と将来。 はやての立場となのはが飛ぶ空。全部守るのは大変だけど、私がしっかりしなきゃ。力を貸してね、バルデッシュ』 スバル「でも、ヴィヴィオって…この先、どうなるんでしょうか?」 なのは「ちゃんと受け入れてくれる家庭が見つかれば、それが一番なんだけど」 スバル「難しいですよね。やっぱり、普通と違うから」 なのは「そうだね。……見つかるまで、時間がかかると思うんだ。 まぁ、だから当面は私が面倒見てけばいいのかなって」 スバル「あっ」 なのは「エリオやキャロにとってのフェイト隊長みたいな、保護責任者って形にしとこうと思って」 スバル「いいですね!ヴィヴィオ、喜びますよ!」 なのは「う~ん…喜ぶかな?」 スバル「きっと!」 ヴィヴィオ「???」 なのは「ほら。やっぱりよく分からない」 スバル「えっと…なんていえば分かるのかな?う~んと。つまり、しばらくはなのはさんがヴィヴィオのママだよってこと」 ヴィヴィオ「ママ?」 スバル「え!?いや~その…」 なのは「いいよ、ママでも。ヴィヴィオの本当のママが見つかるまで、なのはさんがママの代わり。 ヴィヴィオは、それでもいい?」 ヴィヴィオ「……」 なのは「うん?」 ヴィヴィオ「ママ」 なのは「はい、ヴィヴィオ」 ヴィヴィオ「ふぇ……うわぁぁぁん~!!」 スバル「え!!ぇ……」 なのは「何で泣くの~。大丈夫だよ、ヴィヴィオ」 ヴェロッサ「ティアナだっけ?」 ティアナ「はいっ」 ヴェロッサ「君から見て、はやては、どう?」 ティアナ「それは…優秀な魔道師で、優れた指揮官だと…」 ヴェロッサ「うん、そっか。はやてとクロノ君、僕の義理の姉カリム。三人は、結構前からの友人同士でね。 その縁で僕も仲良くしてもらってるんだけど」 ティアナ「あ、はい。存じ上げています」 ヴェロッサ「古代ベルカ式魔法の継承者同士だし、何よりはやてはいい子だ。優しいしね」 ティアナ「はい」 ヴェロッサ「妹みたいなものだと思ってる。だから、色々と心配でね」 ティアナ「はい…」 ヴェロッサ「レアなスキルや強力な魔法、高い戦力。人を使える権限や権力。 そういう力を持つってことは、同時に孤独になっていくってことでもある。僕はそう思う」 ティアナ「はい」 ヴェロッサ「もちろん、必要とはされる。頼られもする。だけど、それは人間としてじゃない。 その人が持っている力そのものが必要とされてるだけ。ああ、もちろんこれは極論だよ。 実際は、そんなにデジタルじゃない」 ティアナ「あ、はい。分かります。強い力を持つ者には、そういった重圧や寂しさが付きまとう、と」 ヴェロッサ「そう、それ。コホン。まぁ、つまり、僕の言わんとしてることは、だね。 部隊長と前線隊員の間だと、色々難しいかもしれないけど、上司と部下ってだけじゃなく、 人間として、女の子同士として、接してあげてくれないかな?はやてだけじゃない。君の隊長たちにも」 ティアナ「了解しました。現場一同、心がけるよう努めます」 クロノ「部隊データを改めて確認したが、はやては身内と部下に恵まれてるな」 ヴェロッサ「だね。ティアナも、いい子だった。でも、罪の意識はなかなか消えないんだろうね。 はやては相変わらず、生き急ぎすぎてると思う」 クロノ「この件を無事にクリアすれば、はやての指揮官適性は立証される。闇の書事件についても、言える者は少なくなるさ」 ヴェロッサ「うん」 クロノ「なのはとフェイトがついているとはいえ、心配ではある。こっちでもフォローしてやりたいが」 ヴェロッサ「本局が表だって動いちゃまずいって言ったばかりじゃないか。僕に任せて。 査察官って立場は、秘密行動に向いてるしさ」 クロノ「すまないな。頼む」 ギンガ「現場検証とあわせて、改めて六課からデータを頂きました」 マリエル「この魔方陣状のテンプレート。使ってる動力反応。これまでのものと桁違いに高精度です」 ゲンヤ「間違いなさそうだな」 マリエル「はい。この子たち全員、最新技術で作り出された…戦闘機人です」 ゲンヤ「ふむ… ゲンヤ「やっぱりと言やぁ、やっぱりか。まだ何にも、終わっちゃいねぇんだなぁ」 フェイト「そう。なのはがママになってくれたんだ」 ヴィヴィオ「うん」 フェイト「でも実は、フェイトさんもちょっとだけヴィヴィオのママになったんだよ?」 ヴィヴィオ「ん?」 フェイト「後見人っていうのになったからね。ヴィヴィオとなのはママを見守る役目があるの」 ヴィヴィオ「……なのはママと、フェイトママ?」 なのは「うん」 フェイト「そう」 ヴィヴィオ「ママ」 なのフェイ「はぁ~い」 エリオ「それにしても、なのはさんとフェイトさんがママって…」 キャロ「ヴィヴィオ…ものすごい無敵な感じ…」 スバル「あはは。それなら二人だって、フェイトさんの被保護者で、なのはさんの教え子じゃない」 エリオ「えっと…それはそうなんですけど」 キャロ「えへへ」 ギンガ『あの時の事件は、まだ終わってない。…母さんを殺した、戦闘機人事件』 次回予告 ギンガ「真相に近づいていく事件」 フェイト「親子と姉妹と、ひと時の平和と…それぞれの絆」 ギンガ「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS第15話」 フェイト「Sisters&Daughters」 フェイト&ギンガ「Take off!」
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2245.html
艦船フリーデン内 休憩室。 大きなソファーに観葉植物が置かれた質素な作りのこの部屋で、ウィッツとロアビィの雇われ組は休憩をとっていた。 ロアビィはを何か考えているのか、壁に寄り掛かって難しい顔をしている。 ウィッツはウィッツでそれを全く意に介さず、つまらなそうにソファーに寝そべっていた。 「おかしいとは思わない?」 ふと、静寂を切ってロアビィがウィッツに話し掛ける。 「何がだよ?」 「ジャミル・ニートといえば、この世界じゃかなり名の通ったバルチャーだろ? そんな奴が実は時空管理局の人間で、『提督』なんて大層な役やってる超エリートと来たもんだ」 「……そのジャミルが、あんな小娘一人に血眼になってるってことか?」 「ご名答」 起き上がり様にウィッツはロアビィに顔を向ける。 実を言うと、ウィッツも少しだけティファの素性が気になっていた。 名目上二人への依頼は『船の護衛』だが、ジャミルから託された真の依頼は『ティファ・アディールの護衛』 しかも仕事は護衛だけだというのに給金は破格。 何故ティファという娘にそこまでこだわるのだろうか。 ウィッツには皆目見当もついておらず、それは話を始めたロアビィも同じだった。 「それにあんなに強そうな局員の方々連れてるのに、俺達みたいなフリーの魔導師雇うのも解せないんだよねぇ」 「裏があるってか?」 「ま、そういうこと」 「……ジャミルが何を考えてるか知らないが、俺には関係ねぇや」 理由を知った所で報酬を貰ったら即さよならだしな、と付け加える。 契約云々以前に、ウィッツは時空管理局と関わりたくないという強い思いがあった。 時空管理局の管理下に置かれたアフターウォーでは法が施行されている。 殆ど飾りに近い法とはいえ、バルチャーを営むにはその法律に則って管理局の許可が必要になるのだ。 しかし質量兵器の使用禁止や魔導師ランク取得などバルチャー認定基準がこの世界の住人にとっては厳しい為、ほとんどのバルチャーは無許可で活動をしている。 ウィッツも認定手続きが面倒だという理由で無許可バルチャーをやっており、時空管理局と行動を共にしている今現在もかなり居心地の悪い思いをしているのだ。 触らぬ神に祟り無しとでも言わんばかりに、ウィッツは再びソファーへ横になった。 そんなウィッツを見てロアビィが呆れたような表情を浮かべる。 「そいつは残念。彼女の秘密がわかれば、それをネタにして儲け話にでも」 「儲け話だぁっ!?」 完全に冷えたと思われたウィッツの態度が急速に加熱した。 ソファーから飛び起き、ロアビィにズイと詰め寄る。 金が絡んだ途端に豹変したウィッツの態度に驚きを隠せないロアビィだが、場所が場所だけに焦りを感じた。 「し、しーっ! 声が大きいよ。誰かが聞いてたらどうすんの?」 「聞いていたが、どうする気だ?」 ハッと口を抑えるが時既に遅し。 後ろから痛い程視線が突き刺さる。 目の前のウィッツの表情が引き吊っているのを見ても、後ろにいるのは話しを聞かれたら相当不味い人間だと言う判断はついた。 ロアビィは恐る恐る後ろを振り返る。 そこにいたのは怖い顔をした鬼……ではなく、腰に手を当てたシグナムとサラだった。 「全く、偵察に行くと呼びに来てみれば。油断も隙もあったものではないな」 「い、いやー……これはその、ちょっとした出来心で……」 「とにかく、キャプテンに報告します」 「ちょ、ちょっと待った!」 ロアビィは去り行くサラの腕を慌てて掴み、自分の方へと引き寄せる。 ジャミルに知られれば報酬を貰う前に追い出される危険さえあるのだ、かなり必死である。 しかしサラは煩わしそうにロアビィを睨み付け、捕まれた腕を振り払う。 「言い訳はキャプテンの前でどうぞ」 「怒ると、素敵な顔になるね」 「この状況でよくそんな口が利けたものだな」 身が危ないと言うこんな時まで口説き文句は忘れない。 そんなロアビィに呆れ果てるシグナムだが、サラは対照的に薄っすらと頬を染めた。 しかし厳しい表情が崩れることはなく、またすぐに部屋の外へと歩みを進める。 その時、またもロアビィの手がサラの腕を掴む。 「おい! 待てって言ってんだろ!」 「ちょ、ちょっと! 放して!」 「キャプテンキャプテン言ってるけどさ、あんたらだって何も知らされずにこんな偏境世界まで来てるんだろ!?」 「そっ、それは……」 確信を突く一言に今まで厳しかったサラの表情が一変した。 目を逸らし、ばつが悪そうな顔でうろたえている。 ロアビィはサラの腕を放し、今度は打先程とって変わった優しい表情を見せた。 「こっちだって命張って商売してるんだ。……せめて、あのティファとかいう娘のこと、知りたいと思うんだけどね」 「そ、それは……」 「シグナムさんもそう思わない?」 「全く思わんな」 即答。 シグナムにも自慢の話術で賛同してもらおうと企てていただけに、思わずロアビィは肩を透かしを食らう。 「私は主はやてを信頼し、主はやてが信頼したジャミル提督に全幅の信頼を寄せている。そのジャミル提督の事だ、何か考えがあってのことなのだろう」 「これは、見上げた忠誠心で……。でも、こちらとシグナムさんみたいにキッパリ割り切れるような性格してないんでね」 ね? とサラに微笑みかけるが、彼女は浮かない顔のまま何も答えない。 それはシグナムのように無償でジャミルを信用出来なかったことへの自己嫌悪によるものか。 はたまた、副官である彼女に何も教えてくれないことへの寂しさか。 結局ロアビィの言葉に何も返せぬまま、サラは無言を貫き続けていた。 ガロードがティファを連れ去ってから数時間。 二人は逃げ込んだ森の中で焚き火を前に並んで座っていた。 木々に囲まれた森の中だけに、月の明かりは入って来ない。 揺らめく炎の明かりだけが二人の顔を照らし出している。 「ティファ。君って、あいつらに捕まるまではどこにいたんだ? それに、あの不思議な力は?」 ティファに話し掛けながら、ガロードは焚き火の中へ拾ってきた小枝をくべた。 だが、ティファは答えない。 沈黙の中、枝の爆ぜる乾いた音だけが暗い森の中に響く。 「魔法、じゃあないよな? もしかして、前の戦争の時にいたっていう超能力者って君みたいな人だったのかな?」 再びガロードはティファに問う。 だが、やはりティファは答えなかった。 上空で透き通った風が吹き、頭上から木々がざわめく音がする。 雰囲気も手伝ってかその音は非常に不気味に聞こえた。 「なぁ、ティファ。黙ってちゃ何もわからないよ」 焚き火の暖かな光を眺めながらポツリ呟く。 そして沈黙が三度二人の間に落ちるかと思われた時だった。 「私は」 「え?」 殆ど自分からは何も喋らなかったティファが、ガロードに話し掛けてきたのだ。 軽い驚きに顔を横へ向けると、ティファと目が合う。 吸い込まれそうな紺碧の瞳がこちらに向けられていた。 「私は、あなたを知りたい……」 「ティファ……うん。わかったよ」 ガロードはティファからの意外な質問を嫌な顔一つせず快諾した。 気持ちの何処かで、ティファのことも知りたいが、自分のことも知っておいて欲しいと思っていたのかもしれない。 視線を再び焚き火の方へと戻し、ガロードは語り始めた。 「俺が生まれたのは、ちょうど戦争が終わった年だった……」 親父は軍に籍を置く技術者だったけど、戦争で死んじまった。 物心ついた頃って、まだめちゃくちゃだった。 太陽なんて出てないし、ずっと冬みたいだった……。 なんだかんだで、友達も半分くらい死んじゃったし。 やっと春が来るようになって、俺は時空管理局の技師になろうと思ってたんだ。 親父の血を継いだらしくって、昔っからそういうのが得意だったから。 それに管理局なら才能次第で子供でも雇ってくれるし。 でもある日、町は流れの魔導師の一団に襲われて……。 酷い有り様だった、ホントに……。 俺、昔から魔法の素質だけは全然なくてさ、何にも出来なかった……。 だから、そんな俺が助かったのは奇跡だった。 いや、あの時、俺は一度死んだんだと思う。 「……へっ、それでふっ切れちゃってさ。今みたいなお仕事になっちゃったってわけ」 「悲しい時代……」 「えっ?」 「思い出も、悲しい……」 そっと、ティファが自分の手をガロードの手に添える。 手自体は、少し冷たい。 しかし、何処か温もりを感じさせるその感覚にガロードの心は解きほぐされてゆく。 「私も、独り……」 「ティファ……」 ガロードは再びティファの瞳を見つめた。 先程は綺麗だと感嘆しただけだったが、今度は少しだけ違う。 ガロードの過去を知ったからか、深い悲しみの色がそこにはあった。 涙など一滴も零れ落ちていないのに、悲しみを感じさせる深い瞳。 その不思議な色に、ガロードはただただ見入っていた。 「暖かい、手……」 「え? ……うぇっ!? うわぁっ!!」 今更ティファに手を握られていることに動揺し、ガロードは慌てて手を離した。 気恥ずかしいやら嬉しいやら、思わず体が縮こまってしまう。 もちろん顔は沸騰したように赤くなっていた。 それが不思議なのか、ティファは小首を傾げる。 だが、次の瞬間その表情が強張った。 『Emergency』 「うわぁっ!?」 GXの警告と同時にティファがガロードを押し倒した。 突然の出来事に目を見張るガロード。 が、目の前を魔力弾が通過し、背後の森に着弾した瞬間全てを悟った。 自分達はまたも襲撃されていると。 「だ、誰だっ!?」 魔力弾が飛んで来たであろう方向を警戒しながら凝視する。 木々の間に魔力の光が見えた。 それはゆっくりゆっくりとガロード達の下へ近づいてくる。 森の中から出て来たのは一人の女バルチャーだった。 そして光は女の持っていたデバイスの魔力刃だと分かる。 「フフフ。お宝を見つけたよ?」 ガロード達を見つめ、女バルチャー――ヴェドバは妖しく微笑んだ。 魔力光が照らすその笑みは、背筋が凍るほど気味が悪い。 「さようなら、坊や達……」 弱者への慈悲でも掛けているつもりなのだろう。 そう囁くとガロード達に掌を向け、拳大の魔力弾を生成した。 GXを起動させようとするガロードだが、ヴェドバが魔力弾を撃つ方が早い。 ヴェドバがそのまま魔力弾を二人に放とうとした刹那。 ヴェドバが出ていた方とは全く違う方向から魔力弾が飛んで来た。 魔力弾はヴェドバとガロードの間に着弾し、凄まじい砂煙が両者を分かつ。 「なっ! 同業者かい!?」 「い、今だ! GX、行くぜ!!」 『Drive ignition』 砂煙の中、すぐさまティファを背に隠れさせガロードは叫んだ。 同時にガロードの体が光に包まれる。 僅か数瞬で光は弾け、バリアジャケット姿のガロードが姿を現した。 光が弾けた衝撃で立ち上がっていた砂煙も晴れる。 だが、そこには目を疑う光景が広がっていた。 「こっ、これはっ! なんて数の魔導師だ!?」 前から、右から、左から。 裕に50は超えるバルチャー達がガロードを狙っていた。 正確には、ガロードの持つGXを。 アフターウォーの大部分である闇を生きる人間は、何もバルチャーだけではない。 情報屋という人種もこの世界において幅を利かせているのだ。 二人が森へ逃げ込んで来た時に茂みから二人を観察していた人物もそんな情報屋の一人。 ガロードは運悪くもGXを所持している所を見られ、バルチャー達に広められてしまったのだ。 「くっ! 渡してたまるかぁっ!」 「うわぁっ!!」 『Round shield』 商売敵の登場に焦ったヴェドバがガロードへ襲いかかった。 辛うじてGXのオートガードにより魔力刃を防ぐ。 しかしいくらデバイスが高性能でもガロードは魔導師として素人だ。 GXに頼り切りで生み出したラウンドシールドは本来の強度の半分にも満たない。 貧弱な障壁はヴェドバの魔力刃によって火花を散らしながら着実に罅を入れられてゆく。 「フッフッフッ……もらったよ!!」 「まだ……まだぁ!!」 『Rifle form』 ガロードの叫びに呼応するようにGXが魔力の光を纏った。 操縦桿の姿は見る見る内に変わってゆく。 光が晴れた時、ガロードの手の中にあったのは白いライフル銃だった。 障壁を維持したまま銃口をヴェドバに向ける。 「ふんっ! 障壁の越しに狙ってどうするつもり」 「食らえ!!」 『Shield buster』 次の瞬間、勝ちを確信していたヴェドバの鳩尾に拳大の魔力弾が直撃した。 障壁として利用していた魔法陣を魔力構築に利用したのだ。 ヴェドバの余裕に満ちていた表情は一瞬で苦痛に歪む。 「がはっ!!」 肺からすべての空気が吐き出されたような錯覚に襲われながら吹き飛ばされるヴェドバ。 そのままの勢いで木に激突し意識を失った。 素人の放った弾とはいえ、ほぼ零距離で射撃魔法を食らったのだ、無傷で済むはずもない。 「よ、よし、まずは一人……うわああぁ!!」 ヴェドバを退け一安心……とは、他のバルチャー達が許さなかった。 同業者が倒れたのを機に、周りで様子を見ていたバルチャー達が一斉にガロード達に攻撃を開始してきたのだ。 罅の入ったラウンドシールドが雨粒の様に飛んでくる弾を防ぐが、いつ消滅してもおかしくない。 (くっ! これじゃあいくらガンダムでも……!) GXを強く握りしめ、反撃できない歯痒さを押さえつけるガロード。 これだけたくさんのバルチャーに囲まれれば、負けは目に見えている。 それに人数も去ることながら、相手は場数を踏んだバルチャー達。自分は初心者。 絶望的だ。 もしガロード一人であったならば、何が何でも逃げようとしていただろう。 「……って、弱音吐いてる場合じゃねぇよな!」 しかし、今のガロードは一人ではない。 守りたい存在が自分のすぐ傍にいるのだ。 有りっ丈の気合いを籠め、ガロードはライフルフォームのGXの銃口をバルチャー達に向けた。 「こんなところで死んでたまるかっ!」 狙いも付けずに引き金を引く。 人数が人数だけに狙いが定まらずとも弾は当った。 「死ぬもんかっ!!」 無我夢中になって引き金を引く。 魔力弾が放たれる度にバルチャーは一人また一人と倒れていった。 「死なせるもんかあああああっっ!!!」 とにかく一人でも多く倒し活路を開く。 自分の後ろに隠れているティファを守るの為に。 ガロードは引き金を引き続ける。 (ガロード……) 10人ほどのバルチャーがガロードの射撃によって気絶した頃。 ガロードを守っていた障壁についにガタが来た。 度重なる攻撃に耐え切れなくなったラウンドシールドは砕け散り、魔力弾の直撃がガロードを襲う。 「うわぁぁぁっっ!!」 バリアジャケットの強度があったお陰で痛みは耐えられる位だが、衝撃は緩和できない。 必死にその場に止まり反撃に出ようとするが、思ったように体が動かないことに気がつく。 慣れない魔力弾の連射にガロードの精神も限界を迎えようとしていたのだ。 「はぁ、はぁ、はぁ……!ジ、GX!」 『Round shield』 少しでも時間稼ぎをとなけなしの魔力で再び障壁を構築する。 が、構築された障壁は点滅し、今にも消えそうなほど頼りないものだった。 これが消えれば、本当にガロードには打つ手がなくなる。 「く、くっそぉ……これまでか………?」 「ガロード」 「えっ?」 ガロードが今度こそ諦めかけたその時、彼の背に隠れていたティファが口を開いた。 命の危機が迫っているというのに、彼女の声は落ち着きを放っている。 「あなたに、力を…」 「力? 力って一体……?」 ガロードが聞き返す声も聞かずティファは不意に目を閉じた。 何かを感じているのか? 理解に苦しむガロードだったが、変化はいきなりやって来た。 『ニュータイプによるシステムロック解除確認。サテライトシステム起動』 GXが告げた瞬間、ライフルフォームだったGコンはデバイスフォームへと戻った。 「な、なんだ!?」 『Satellite form』 「うわぁ!?」 変化はそれだけでは終わらなかった。 再びGコンが変形し、小型画面と透き通った緑のレンズ部が現れる。 更に発動させていない筈のリフレクターウイングの翼までもが出現。 極めつけは、ただ背負っているだけだった巨大な砲身が稼働し、ガロードの右肩を陣取ったのだ。 連続する変化について行けないガロードの前に、今度は空間モニターの画面が現れる。 そこには細かな文字とともに、こう記されていた。 『SATELLITE SYSTEM GX-9900 NT-001』と。 「サテライト…システム……? これが、その力なのか?」 その問いに小さく頷くティファ。 元の性格の為だろうか、それとも例の不思議な力で勝利を確信しているのだろうか、表情に不安や焦りは見て取れない。 しかしガロードにとっては些細なことだ。 諦めるくらいならとGXを強く握りしめた。 「よぉし……行くぜっ!」 『フラッシュシステム起動。メインシステムとの魔力リンク接続。初回ユーザー登録を行います』 丁度その頃。 ティファの捜索を再開したフリーデンが、今まさにガロード達が戦闘をしている森へ近付いていた。 戦闘と思わしき光を見つけ、もしやガロードではないかと疑いを持ったからだ。 守護騎士一同と雇われ組は偵察に行っているため、ブリッジには緊急時に襲撃できるようはやてが待機している。 「キャプテン、そろそろ戦闘区域に……あら?」 「どうしたですか?」 管制の手伝いをしていたリインがサラの疑問符を浮かべた声に反応する。 「あ、いや、戦闘中だと思われる魔導師一体の魔力値が規則的に上下しているの。どこかと通信でもしているのかしら」 「なに!? まさかっ……!」 「? ジャミル提督?」 「至急偵察に出ている守護騎士達を呼び戻せ!!」 「は、はいです!!」 様子が急変したジャミルに驚きつつも、リインはすぐにシグナム達と通信を始めた。 ジャミルは落ち着きを失い、体を震わせながら拳を握る。 脳裏に過るのは15年前の悪夢。 (やめるんだ! ティファッ!) 強く念じるジャミルだが、頭を駆け巡ったのは激しいノイズだけだった。 同時に、横にいたはやてが月から伸びる一本の光を視認する。 「なんや、あれ……?」 『ユーザー登録完了。魔力受信用ライン精製』 GXを銃を撃つように構えると、月から伸びてきた魔力ラインがレンズ部に直結した。 空間モニターの内容が文字から射撃照準へと変わり、ガロードの狙いと照準の中心がリンクする。 「次っ! 4.03秒後に……月の魔力!?」 「……来ます」 ティファの言葉の直後、膨大な月の魔力が魔力ラインを通してGXへと流れ込んできた。 同時にGX内蔵された小型画面にリフレクターウイングと全く同じ形のケージが現れ、魔力のチャージ量を逐一表示する。 ガロードの背のリフレクターウイングも更なる輝きを放ち、それに怯んだバルチャー達は思わず攻撃を中止した。 歴戦の勘から逃げ出す者も少なくない。 魔力を受けているガロード自身も、デバイスから伝わる魔力の強さにGXを握る力が強まる。 『ライン精製及び受信成功。チャージ完了までのカウントダウンを開始します』 「キャプテン! 例の対象魔力値が大幅に上昇しています!!」 「くっ! ティファよ……!」 ノイズと闘いながらティファに呼びかけるジャミルだが、返答は全くない。 遂には耳から鮮血が垂れ出してきた。 「は、はやてちゃん……」 「誘拐事件は起こるわ月からレーザー光線が降ってくるわ……今度は一体何が起きるって言うんや……」 不安げな表情を浮かべて近づいてくるリインを軽く抱き寄せ、はやては深く溜息をついた。 しかし、不安を抱えているのははやても同じだ。 ジャミルの只ならぬ様子を見ていれば、これから何が起こるのか想像がつかなくても恐怖を掻き立てられる。 何かとんでもないことが起こる。 フリーデンクルー全員が緊張に包まれた。 『Three』 ――秩序の崩壊したこの世界にあって、頼れるのは己の力だけである。 生きるためには、戦わねばならないのだ。 確かに戦争は終結した。 だが、一人一人の戦争は、まだ終わってはいなかった。 『Two』 だから人は力を求めた。 己の欲を満たすため、己の大切だと思うものを守るため。 ただ我武者羅に力を求めた。 手に入れた力は争いを招くと知っていて、それでも人は力を求めた。 そして、人が求めた力によって…… 『One』 悪夢は再び蘇る―― 『Count zero』 「撃つなあああああああああああああ!!!」 「行けええええええええええええええ!!!」 『Satellite cannon』 奇しくも、ジャミルの叫びとガロードが引き金を引くのは同時だった。 瞬間、サテライトキャノンの砲口から眩い『光』が噴き出す。 噴き出した『光』は一本の巨大な束となり触れたもの全てを飲み込んでゆく。 草花が、木が、暗闇が、人が、全て例外なく。 『無慈悲』という言葉が最も当てはまるのだろう、その光の前には如何なるものも抵抗を許されなかった。 「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 そして光の爆心地であるガロードの視界も光に包まれてゆく。 まるで自分の体が消えてゆくような感覚。 広がってゆく無音の世界。 目の前の現象を全く理解することが出来ず、ガロードはただ叫ぶしかなかった。 ――ティファの異変に気付かずに。 かくして、森は数分も経たないうちに光に溶けた。 強い恐怖のみを感じる、死の光に。 『GX-9900 ガンダムX』 15年前一つの世界を滅ぼしかけたデバイスの名である。 ―PREVIEW NEXT EPISODE― 復活したサテライトシステムにより、多くの人間が死に、ティファの心は深く傷ついた。 時空管理局の精鋭達により捕えられたガロードは、GXを奪われ監禁されてしまう。 そして他方では、大いなる悪意が静かに動き始めていた。 第三話「私の愛馬は凶暴です」 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/53.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第25話【ファイナル・リミット】 なのは「出会いは偶然。初めは何も分らなかった。ただ、目の前で泣かれると私も何だか悲しくて。 行かないでって抱きつかれると、胸が切なくて。笑ってくれると嬉しくて。 上手く言葉にできないけど、きっと大切な子。守れなかった約束を、今度はきっと守るから。 だから待ってて。ママが絶対、助けるから!」 ヴィータ「なのはもう、玉座の間についてる頃だよな。はやても、外で戦いながら船が止まるのを待ってる」 「こいつをぶっ壊して、この船を止めるんだ!リミットブレイク、やれるよな?」 「上等だよ。うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」 シャーリー「時限航行部隊の到着まで、後45分。巨大船の気道ポイント到達まで、後38分」 はやて「七分差」 シャーリー「主砲の照準はミッド首都に向けられています。七分あれば」 はやて「撃てるやろうね。防衛ライン現状維持!誰か指揮交代!今から私も突入する」 シャーリー「え!?」 はやて「軌道上になんて、上らせへん。地上に攻撃もさせへん!」 グリフィス「八神部隊長!」 アルト「割り込み失礼します!こちら、ロングアーチ03!」 はやて「アルト!?」 アルト「八神部隊長!後もうちょっとだけ待ってください!大事なお届けものを、今そちらに!」 なのは「ヴィヴィオ」 ヴィヴィオ「勝手に、呼ばないで!」 ヴィヴィオ「こんなの、効かない!」 クアットロ「あはははは、やっぱり~。陛下~、その悪魔が使ってるパワーアップ、どんどん使わせちゃって下さい~。 ブラスターとやらの正体は、術者が耐えうる限界を遙かに超えた自己ブースト。撃てば撃つほど、 守れば守るほど、術者もデバイスも命を削っていきます。うっふふ。優秀な前衛がいて、 後先考えない一撃必殺を撃てる状況なら、そりゃまぁおっかないスキルなんでしょうけど。 こんな状況では、役に立ちませんよね」 エリオ「キャロ、ルーを連れて上に」 キャロ「うん」 エリオ「地雷王たちは、僕たちが止める!!」 シグナム「同行を願います」 ゼスト「断る。ルーテシアを救いに戻り、スカリエッティを止めねばならん」 シグナム「スカリエッティと戦闘機人たちは既に逮捕。ルーテシア・アルピーノも、私の部下たちが保護するべく動いています」 ゼスト「そうか。ならば俺の成すべきことは、後一つだけか」 アギト「旦那!!何故!!」 ゼスト「じっとしていろ!!」 ゼスト「夢を描いて未来を見つめたはずが、いつの間にか、随分と道を違えてしまった。 本当に守りたいものを守る、ただそれだけのことの、なんと難しいことか」 ヴィータ「なんでだよ。なんで、とおらねぇ!こいつをぶっ壊さなきゃ、皆が困るんだ。 はやてのことも、なのはのことも!守れねぇんだ!こいつをぶちぬけなきゃ!意味ねぇんだ!!」 ヴィータ「駄目だ。守れなかった。はやて、みんな、ごめん!」 はやて「謝ることなんて、なんもあらへん」 ヴィータ「はやて、リイン」 リイン「はいです」 はやて「鉄槌の騎士ヴィータとグラーフアイゼンが、こんなになるまで頑張って。 それでも壊せへんもんなんて、この世のどこにも、あるわけないやんかっ」 シャッハ「通路封鎖?ロッサ!」 ヴェロッサ「こりゃ、自爆装置でも作動してそうな勢いだね」 フェイト「これは、一体っ」 スカリエッティ「ふふふ、クアットロが、この拠点の破棄を決意したようだ」 フェイト「止めさせて。このままじゃ、あなたも一緒に」 スカリエッティ「言ったろ。彼女の体内には、私のコピーがいる。こちらの私は用済みなのさ」 クアットロ「防御機構フル稼働。予備エンジン駆動。自動修復開始。ふふ、まだまだ。これは」 レイハー『ワールドエリアサーチ、成功。座標特定、距離算出』 なのは「見つけた」 クアットロ「エリアサーチ!!まさか、ずっと私を探してた?だ、だけどここは最深部。ここまで来られる人間なんて」 クアットロ「壁ぬき!?まさか、そんな馬鹿げたことが!?」 レイジングハート『通路の安全確認、ファイアリングロック解除します』 なのは「ブラスター3!!」 なのは「ディバイーーーン、バスターーー!!」 クアットロ「いや、いやああああ!!あ、あぁ、ドクターの夢が、わたしたちの、世界、が」 ラッド「ガジェット、完全停止。他の地点も同様です」 ゲンヤ「六課の連中がうまいことやったか!」 なのは「ヴィヴィオ?ヴィヴィオ!」 ヴィヴィオ「なのは、ママ。駄目!逃げてぇ!!」 ヴィヴィオ「駄目なの。ヴィヴィオ、もう、帰れないの」 なのは「っ!」 ゆりかご『駆動路破損、管制者不在。聖王陛下、戦意喪失。これより、自動防衛モードに入ります。 艦載機、全機出動。艦内の異物を、すべて排除してください』 はやて「いくよ、リイン!」 リィン「撃ち抜いて、進みます!」 なのは「ヴィヴィオ、今助けるから!」 ヴィヴィオ「駄目なの!止められない!」 なのは「駄目じゃない!!!」 ヴィヴォオ「もう、来ないで」 なのは「うっ」 ヴィヴィオ「分かったの、私。もうずっと昔の人のコピーで、なのはマ、なのはさんも、フェイトさんも、本当のママじゃ、 ないんだよね?この船を飛ばすための、ただの鍵で、玉座を守る、生きてる兵器」 なのは「違うよ」 ヴィヴィオ「本当のママなんて、元からいないの。守ってくれて、魔法のデータ収集をさせてくれる人を、探してただけ」 なのは「違うよ!」 ヴィヴィオ「違わないよ!しいのも、痛いのも、全部偽物の、作りもの。私は、この世界にいちゃいけない子なんだよ!」 なのは「違うよ。生まれ方は違っても、今のヴィヴィオは、そのやって泣いてるヴィヴィオは、偽物でも作りものでもない。 甘えん坊ですぐ泣くのも、転んでも一人じゃ起きられないのも、ピーマン、嫌いなのも。私が寂しい時に、 いい子ってしてくれるのも、私の大事なヴィヴィオだよ」 なのは「私が、ヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから、本当のママになっていけるように努力する。 だから!いちゃいけない子だなんて、言わないで!本当の気持ち、ママに教えて」 ヴィヴィオ「私は、私は!なのはママのことは、大好き。ママとずっと、一緒にいたい。ママ?助けて!」 なのは「助けるよ。いつだって、どんなときだって!!」 なのは「ヴィヴィオ、ちょっとだけ、痛いの我慢できる?」 ヴィヴィオ「うん」 なのは「防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン。いけるね、レイジングハート!」 レイジングハート『いけます』 なのは「全力、全開!!スターライトーー!ブレイカーーー!!!」 なのは「うっ、う、ヴィヴィオ?ヴィヴィオ!」 ヴィヴィオ「来ないで」「一人で、立てるよ。うっ、ぐ。強くなるって、約束したから」 ルキノ「巨大船、船速低下!上昇速度、激減!これなら、艦隊の到着のほうが速いです!七分差が埋まります!」 ゆりかご『聖王陛下、反応ロスト。システムダウン』 はやて「なのはちゃん!」 なのは「はやてちゃん」 ゆりかご『艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします。艦内の乗員は、休眠モードに入って下さい』 ゼスト「俺の知る限りの事件の真相は、この中に納めてある」 シグナム「お預かりします」 ゼスト「アギトとルーテシアのこと、頼めるか?巡り合うべき相手に、巡り合えずにいた、不幸な子供だ」 アギト「旦那!!」 ゼスト「アギト、おまえやルーテシアと過ごした日々。存外、悪くなかった。いい空だな」 シグナム「はい」 ゼスト「俺やレジアスが守りたかった世界。おまえたちは、間違えずに進んでくれ」 アギト「旦那~!!」 そして、ティアナとスバルが合流。ギンガ無事のようで何よりです。 お、シャマルだ。犬は? ヴァイス「船の上昇は止められたみてぇだが、あの中じゃまだ、戦いが続いてんだ」 シャマル「突入したなのはちゃんたちと連絡がつかなくなってるの」 スバティア「え!?」 ヴァイス「インドアでの脱出支援と救助任務、陸戦やの仕事場だぜ!」 スバティア「はい!」 次回予告 なのは「事件が終わりを告げる時」 スバル「そして、機動六課がその役目を終える時」 なのは「離れ離れになっても、消えないもの、忘れないもの」 スバル「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS最終話」 なのは「約束の空へ」 なのは・スバル「Take off!」
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/21.html
笑顔で再会 懐かしい友達―― 聖王教会本部 13 45 ウェンディ「いよーっス。オットー、ディード」 ディエチ「久し振り」 ディード「ウェンディ姉様、ディエチ姉様」 オットー「二人ともごぶさた」 ディード「他の皆さんは?」 ディエチ「チンク姉は騎士カリムとシスターシャッハんとこ。なんかお話だって」 「ヴィヴィオとノーヴェはイクスのお見舞い」 ウェンディ「イクス元気っスか?」 オットー「健康状態には異常なし。静かにお休みだよ」 ディード「陛下やスバルさんもよくお見舞いに来て下さいますし。きっと楽しい夢を見ておいでなのかと」 ヴィヴィオ「ごきげんようイクス。――お加減良さそうだね?」 なかよしトリオ 夏モード☆ Memory;03☆「ストライクアーツ」 同時刻 教会内 カリム・グラシア執務室 カリム「お話って言うのは……例の傷害事件のことよね?」 チンク「ええ、我ながら要らぬ心配かとは思ったのですが。 件の格闘戦技の実力者を狙う襲撃犯。彼女が自称している『覇王』イングヴァルトと言えば――」 カリム「ベルカ戦乱期…諸王時代の王の名ですね」 チンク「はい」 「時代は異なりますがこちらで保護されているイクスヴェリア陛下やヴィヴィオの母体(オリジナル)である 『最後のゆりかごの聖王』オリヴィエ聖王女殿下とも無縁ではありません」 カリム「ヴィヴィオやイクスに危険が及ぶ可能性が?」 チンク「無くないかと」 「聖王家のオリヴィエ聖王女。シュトゥラの覇王イングヴァルト。ガレアの冥王イクスヴェリア。 いずれも優れた『王』達でしたから――ああ、もちろん。かつての王達と今の二人は別人ではあるのですが」 カリム「ええ、それを理解しない者もいるということですよね」 シャッハ「とはいえ『覇王イングヴァルト』は物語にも現れる英傑です。単なる喧嘩好きが気分で名乗っている可能性も大きいですよ」 チンク「――ですね」 カリム「でも犯人が捕まるまでイクスの警戒は強化するわ。セインについてもらいましょう ヴィヴィオについては……」 チンク「それはこちらで。私と妹たちがそれとなく」 ヴィヴィオ「みんなごきげんよう~♪」 オットー「ああこれは陛下…とノーヴェ」 ディード「陛下、イクスのお見舞いはもう?」 ヴィヴィオ「うんディード。いっぱい話したよ」 ノーヴェ「あたしらはもう戻るけどおまえらは?」 ウェンディ「あーあたしも」 ディエチ「私はもう少し」 オットー「陛下よろしければこれを。自信作のビスケットです」 ヴィヴィオ「わ♪ありがとオットー♪」 セイン「んじゃ、あたしは3人を送ってくるなー。その間はサボれる」 ノーヴェ「しかしいいのかヴィヴィオ。双子からの陛下呼ばわりは」 ヴィヴィオ「え?」 ノーヴェ「前は「もーっ陛下って言うのは禁止――っ」……とか言ってたろ」 ヴィヴィオ「あー」 「まあ、もう慣れちゃったし。あれも二人なりの敬意と好意の表現だと思うし」 ノーヴぇ「あいつらなんかズレてっからなあ」 セイン「この後はいつものアレか。ん?ウェンディもやるんだっけ?」 ウェンディ「ま、二人にお付き合いっス」 ミッドチルダ 中央市街地 リオ「あ!」 ヴィヴィオ「リオ!コロナ!おまたせー!」 コロナ「こんにちわー」 ヴィヴィオ「リオは二人と初対面だよね?」 リオ「うん」 リオ「はじめまして!去年の学期末にヴィヴィオさんとお友達になりました。リオ・ウェズリーです!」 ノーヴェ「ああノーヴェ・ナカジマと」 ウェンディ「その妹のウェンディっス♪」 コロナ「ウェンディさんはヴィヴィオのお友達で、ノーヴェさんは私たちの先生!」 ウェンディ「友だちー♪」 ノーヴェ「はなせって!」 ウェンディ「よ、お師匠様!」 ノーヴェ「コロナ。先生じゃないっつーの!」 コロナ「先生だよねー?」 ヴィヴィオ「教えてもらってるもん」 リオ「先生って伺っています!」 ウェンディ「ほら(ハートマーク)」 ノーヴェ「うっせ」 中央第4区 公民館 ストライクアーツ練習場(トレーニングスペース) リオ「でも、やっぱ以外~!ヴィヴィオもコロナも文系のイメージだったんだけどなぁ」 「初めて会ったのも無限書庫だったし」 ヴィヴィオ「文系だけどこっちも好きなの」 コロナ「私は全然、初心者(エクササイズ)レベルだしね」 リオ「ほんとー?」 ノーヴぇ「さあ、いくぞー」 ヴィヴィオ・コロナ・リオ「はーいっ!」 ウェンディ「へ――!なかなかいっちょまえっスねぇ」 ノーヴェ「だろ?」 ストライクアーツはミッドチルダで最も競技人口の多い格闘技であり 広義では「打撃による徒手格闘技術」の総称でもある リオ「でもヴィヴィオ、勉強も運動もなんでもできてすごいよねぇー」 ヴィヴィオ「ぜーんぜん!まだなんにもできないよ。自分が何をしたいのか。何ができるのかもよく分からないし。 だから今はいろいろやってみてるの」 リオ「そっか」 ヴィヴィオ「リオとコロナといろんな事いっしょにできたら嬉しいな」 リオ「いいね!一緒にやっていこう!」 ノーヴェ「さてヴィヴィオ、ぼちぼちやっか?」 ヴィヴィオ「うん!」 「さー出番だよクリス!服はトレーニングモードでね」 「セイクリッドハート!セットアップ!」 ノーヴェ「すみません。ここ使わせてもらいまーす」 ヴィヴィオ「失礼しまーす」 リオ「なんか二人とも注目されてない?」 コロナ「二人の組手凄いからねー。リオもちょっとびっくりするよ」 ヴィヴィオ「いくよノーヴェ」 ノーヴェ「おうよ!」 ウェンディ「二人ともやるもんっスなぁ」 コロナ「はい」 ヴィヴィオ「今日も楽しかったねー」 リオ「てゆーか、びっくりの連続だよー」 ノーヴェ「悪ィ、チビ達送ってってやってくれるか?」 ウェンディ「あ、了解っス。なんかご用事?」 ノーヴェ「いや救助隊。装備調整だって」「じゃ、またな」 ヴィヴィオ・コロナ・リオ「おつかれさまでしたー!」 ヴィヴィオ「ただいまー」 なのは「おかえりーヴィヴィオ」 ヴィヴィオ「ママ、これからお風呂?」 なのは「うん。今フェイトママが入っているからその後にね。これはフェイトママのパジャマ」 ヴィヴィオ「ホント!?それじゃあ……」 シャーリー『フェイトさん、今日も会議と臨検お疲れ様でした。明日も早朝からで申し訳ないんですが』 フェイト「ん、大丈夫」 シャーリー『いつものところでお迎えにあがりますので』 フェイト「お願いね、シャーリー」 ヴィヴィオ「フェイトママ~♪一緒に入っていいー?」 フェイト「いいよーいらっしゃーい」 ヴィヴィオ「それじゃあ~……」 ヴィヴィオ・なのは「おじゃましまーす」 フェイト「な……なのはもッ!?」 なのは「ヴィヴィオが一緒がいいって」 ヴィヴィオ「フェイトママ、明日も早いんでしょ?一緒にいられる間は一緒にいようよー」 フェイト「――うん、そうだね」 ヴィヴィオ「(ハートマーク)」 なのは「フェイトちゃん、久しぶりに髪の毛洗ってあげようか?」 ヴィヴィオ「あー!わたしもー!」 ヴィヴィオ「それでクリス、みんなに大人気(ハートマーク)かわいいって!」 フェイト「ほんと?みんなクリスの正式名称(セイクリッドハート)については何か言ってた?」 ヴィヴィオ「やっぱりねーとか、いい名前だねって」 なのは「なーに、二人でナイショ話!」 ヴィヴィオ「やーん」 「あ…そういえばノーヴェ達が今度ママたちにお礼したいって、こないだ本局を案内してもらったお礼だって」 なのは「なんだそんなこと。気にしないでって言っといて。でもほんと、ノーヴェ達もまっすぐ育ってくれてるよね」 フェイト「うん……ほんと」 イングヴァルト「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします。 あなたにいくつか伺いたい事と確かめさせていただきたい事が」 激突!天に覇王!!地にノーヴェ!!! 高町ヴィヴィオ St.ヒルデ魔法学院初等科4年生の女の子。その正体は、かつて世界を統治したという「聖王」のクローン体。 スカリエッティに道具として利用された過去をもつが、今は二人のママに見守られて元気に育っている。 ヴィヴィオ変身後 ヴィヴィオが専用の魔導デバイス、「セイクリッド・ハート」を起動させて変身した姿。 かつてなのはを苦しめた「聖王モード」と似た格好だが、これは魔法の使用や武術の練習をしやすくするための変身である。 アインハルト・ストラトス St.ヒルデ魔法学院中等部の生徒。ヴィヴィオと同じ、瞳の虹彩異色がみられる。 本編にはいまだ未登場の謎多き少女だが、ヴィヴィオとの出会いはいつ訪れるのか……? コロナ・ティミル 立ち振る舞いがとっても優雅な、礼儀正しいお嬢様。ヴィヴィオとは一年のころからの親友で、 リオともすぐに打ち解け、なかよしトリオを結成した。キャンディ型の髪留めがお気に入りのアイテム。 リオ・ウェズリー 明るくてノリのいいヴィヴィオのクラスメイト。4年生になる少し前に知り合ったばかりなのに、 ヴィヴィオやコロナとはすでに大親友。身体を動かすのが大好きな元気娘。自分用のインテリ型デバイスをもつ。 高町なのは かつて「空のエース」と呼ばれた時空管理局の教導官。9歳のときに魔導デバイス「レイジングハート」と出会って以来、 数々の事件を乗り越えて成長してきた。今はヴィヴィオの母親として、静かな毎日を送る。 フェイト・T・ハラオウン 時空管理局の執務官。ケタ違いのスピードを生かした近接戦を得意とする。 自らの生まれもあって不幸な境遇の子供に思いやりが深く、 エリオやキャロの保護責任者や、ヴィヴィオの後見人を務めている。 八神はやて 時空管理局の特別捜査官。魔導師としての能力はなのはやフェイトを上回る。少女時代になのは達に救われて以来、 機動6課の設立など、多くの人を救うために自分の力を生かそうと尽力し続けてきた。 ヴィータ 「鉄槌の騎士」の異名をもつ、はやての守護騎士のひとり。ぶっきらぼうな性格だが根は素直で、 機動6課では戦闘教官も務めた。ハンマー状のデバイス「グラーフアイゼン」による超破壊力の攻撃魔法が得意。 シグナム まじめで思いやりのある守護騎士たちのリーダー。フェイトとは互いに実力を認め合う友人で、機動6課時代は副官として彼女を支えた。 愛剣「レヴァンティン」を駆使しての近接戦闘では、敵なしの強さを誇る。 ティアナ・ランスター 訓練校時代からのスバルの親友。執務官を一途にめざす、負けず嫌いのしっかり者。 幻術魔法と銃型デバイスを生かした中距離戦を得意とする魔導師で、長年続けてきたスバルとのコンビワークは一級品。 スバル・ナカジマ ローラーブーツとナックルを駆使した格闘技法で戦う陸戦魔導師。幼いころに命を救ってくれたなのはの姿に憧れ、 機動6課時代には彼女から勇気の意味を学ぶ。ボーイッシュな外見に反してふだんは内気な性格。 キャロ・ル・ルシエ 龍を召喚し使役する能力を持つ魔導師。少数民族の生まれで。集落を離れてしまい各地を転々としていたところをフェイトに保護された。 現在はパートナーであるエリオとともに自然保護隊員をしている。 エリオ・モンディアル 槍型デバイス「ストラーダ」を操る優しい少年期氏。不遇の少年時代を送り、荒みきっていたところをフェイトに救われ、 彼女のことを本当の親のように慕っている。現在は辺境で自然保護隊員として活躍中。 チンク・ナカジマ ナカジマ家の次女で、本ナンバーズの「5」。潜入任務と破壊工作を得意とする。昔の戦いで右目を負傷したため、 黒い眼帯をつけている。面倒見のいい性格で、今は次女として奔放な妹たちをまとめている。 ディエチ・ナカジマ ナカジマ家の3女で、元ナンバーズの「10」。ナンバーズ時代は主に狙撃・砲撃による後方支援を担当。 従順に任務をこなしながらも、スカリエッティのやり方には疑問をもっていた。 ノーヴェ・ナカジマ 元ナンバーズの「9」。短気で直情的な性格。見た目や戦い方がスバルとうり二つ。ナカジマ家の5女となった今は、 アルバイトをしながら訓練校などで格闘技を学んでいる。ヴィヴィオとも仲良し。 ウェンディ・ナカジマ ナカジマ家の末っ子で元ナンバーズの「11」。元気で甘えんぼう。多種な機能を持つ巨大な楯「ライディングボード」を駆使して、 ノーヴェとともに前線任務を担当していた。語尾に「ッス」とつくのが特徴。 魔法少女たちの熱きバトルアクションや、緻密に設定された壮大な世界観で多くのファンをつかんできた 大人気シリーズ「魔法少女リリカルなのは」。本誌でも最新シリーズとなる「魔法少女リリカルなのはVivid」 が好評連載中の本作だが、今回はそんな作品の魅力がたっぷり詰まった、表も裏も楽しめる ヒロインコレクションポスターをみんなにお届けだ! 第1期で激しい対決を経て、真の友情を築いたなのはとフェイト。 第2期で悲しい事件を乗り越え、本当の絆を確かめ合ったはやてと騎士たち。 第3期でなのはを継ぐ新たな世代として成長してきたスバルたち。 そしてなのはとフェイトの娘である新たな主人公ヴィヴィオ……。 そんな歴代の魔法少女たちの魅力をしっかり再確認してくれ!
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/46.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第16話【その日、機動六課(前編)】 スバル「戦闘機人戦以降、緊急出動は何故だか全然無くなっちゃいました。 六課に出向してきたギン姉と一緒に私たちは、訓練、訓練、また訓練の日々。 ヴィヴィオも元気に笑うようになって、なのはさんも、何だか嬉しそうで。 フォワードチームも副隊長たちも、皆凄く元気。何か、どんな事件が来ても絶対無敵! な、気がするんだ。だから父さん。私たちは大丈夫ですよ。じゃあ、またメールするね。スバルより」 はやて「明日14時の開会に備えて、現場の警備はもう始まってる。 なのは隊長と、ヴィータ副隊長、リイン曹長とフォワード四名はこれから出発。ナイトシフトで警備開始。 私とフェイト隊長、シグナム副隊長は…明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな!」 「はい!」 なのは「あれ?ヴィヴィオ。どうしたの?ここは危ないよ?」 アイナ「ごめんなさいね、なのは隊長。どうしてもママのお見送りをするんだって」 なのは「ん~。駄目だよ、ヴィヴィオ。アイナさんに我侭言っちゃ」 ヴィヴィオ「ごめんなさい」 フェイト「なのは、夜勤でお出かけは初めてだから、不安なんだよきっと」 なのは「あ~、そっかぁ。なのはママ、今夜は外でお泊りだけど、明日の夜にはちゃんと帰ってくるから」 ヴィヴィオ「絶対?」 なのは「絶対に絶対」 ヴィヴィオ「う?」 なのは「良い子で待ってたら、ヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるから。ママと約束ね」 ヴィヴィオ「うん!」 スバル「それにしても、ヴィヴィオ。ほんとに懐いちゃってますね~」 ティアナ「全く」 なのは「そうだね。結構厳しく接してるつもりなんだけどなぁ~」 キャロ「きっと分かるんですよ。なのはさんが優しいって」 なのは「あははは…」 リィン「もういっそ、本当になのはさんの子供にしちゃうとか!」 なのは「受け入れてくれる家庭探しはまだまだ続けるよ。良い受け入れ先が見つかって、 ヴィヴィオがそこに行くことを納得してくれれば」 エリオ「納得しない気が…」 キャロ「うん」 なのは「え~!」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「うん、うん」 なのは「あぁ…そりゃ、ずっと一緒にいられたら嬉しいけど、本当に良い行き先が見つかったら、ちゃんと説得するよ? 良い子だもん。幸せになって欲しいから」 なのは「ぁ…まぁ!えーと。そんな家庭が見つかるまでは、私が責任もって守ってくよ。それは、絶対に絶対」 スバル「ですね!」 キャロ・エリオ「はい!」 六課の待舎にいるフェイトのところへリンディから連絡 ヴィヴィオ「リンディママはフェイトママのママ」 フェイト「うん」 ヴィヴィオ「こっちのママも、フェイトママのママ…」 フェイト「そうだよ。テスタロッサのお家の、プレシア母さんとアリシアお姉ちゃん。 ハラオウンのお家のリンディ母さんとクロノお兄ちゃんたち。プレシア母さんが私に命をくれて、 リンディ母さんが今も私を育ててくれてるの」 ヴィヴィオ「う~ん?」 フェイト「うっふふふふ。ごめん、難しかったね。どっちの母さんもフェイトママにとっては母さんなんだよってこと」 ヴィヴィオ「ヴィヴィオといっしょ?」 フェイト「うん。一緒」 ヴィヴィオ「へへっ」 ティアナ「実は…失礼かとは思ったんですが。ヴァイス陸曹のこと、ちょっと調べちゃいました」 ヴァイス「んあ?」 ティアナ「数年前まで、エース級の魔道師だったって」 ヴァイス「なんだそりゃ。エースなもんかい。俺の魔力値なんざ、おまえの半分以下だっつうの」 ティアナ「それでも、アウトレンジショットの達人で、優秀な狙撃手だったって」 ヴァイス「はぁ。…昔はどうあれ、今の俺は六課のヘリパイロットだ。おまえが聞いて参考になる話なんぞねぇぞ」 ティアナ「……」 ヴァイス「っぁ。だいたいおめーは、よけいなこと考えてる場合か?ぼけっとしてっと、またミスショットで泣くぞ、バカタレが」 ティアナ「すみませんでした」 ヴァイス「昔の話さ、そうだろ?ストームレイダー」 ストームレイダー「I think so.」 なのは「内部警備の時、デバイスは持ち込めないそうだから、スバル。レイジングハートのこと、お願いしていい?」 スバル「ぇ、あ、はい!」 なのは「前線の皆で、フェイト隊長たちからも預かっておいてね」 スバル「はい!」 アナウンサー「本局や各世界の代表によるミッドチルダ地上管理局の運営に関する意見交換が目的のこの会。 今回は特に、かねてから議論が絶えない、地上防衛用の迎撃兵器、 アインヘリアルの運用についての問題が話し合われると思われます。 ヴィータ『それにしても、だ。いまいち分からねぇ。予言通りに事が起こるとして、内部のクーデターって線は薄いんだろ?』 なのは『アコース査察官が調査してくれた範囲ではね…』 ヴィータ『そうすっと、外部からのテロだ。だとしたら、目的はなんだよ』 なのは『う~ん』 ヴィータ『犯人は例のレリック集めてる連中。スカリエッティ一味だっけか?』 なのは『うん』 ヴィータ『やつらだとしたら、更に目的が分からねぇ。局を襲って何の得がある』 なのは『兵器開発者なら、自分の兵器の威力証明…かな。管理局の本部を、 壊滅させられる兵器や戦力を用意できるって証明できれば、欲しがる人はいくらでもいるだろうし』 ヴィータ『威力証明なら、他にいくらでもできる場所がある。リスクが高すぎるだろ』 なのは『…だよね』 ヴィータ『どうも読めねぇ』 なのは『まぁ、あんまり考えてもしょうがないよ。…信頼できる上司が命令をくれる。私たちは、その通りに動こう』 ヴィータ『そうだな』 ウーノ「楽しそうですね」 スカリ「ああ…楽しいさ。この手で世界の歴史を変える瞬間に、研究者として、技術者として、 心が沸き立つじゃあないか。そうだろ?ウーノ。「我々のスポンサー氏にとくと見せてやろう。 我らの思いと、研究と開発の成果をな。さぁ、始めよう!」 ウーノ「はい」 レジアス「会の中止はせんぞ。迅速に賊を捕らえよ」 局員「はっ!」 レジアス「地上本部の防衛は鉄壁だ。進入できるものなどおらん」 クアットロ「別に~。中まで進入する必要はな~いもん。囲んで無力化してしまえば」 はやて「閉じ込められたか!」 シグナム「AMF濃度が高い。魔力が結合できなくなっています」 はやて「通信も通らへん。……やられた!」 シャーリー「外からの攻撃はひとまず止まってますが、中の状況は不明です!」 グリフィス「……っ」 スバル「副隊長!私たちが中に入ります!なのはさんたちを、助けにいかないと!」 フォワード「うん」 ヴィータ「……っ」 ヴィータ「リイン!ユニゾン、行くぞ!」 リイン「はいです!」 なのは「会議室や非常口へ道は、完全に隔壁ロックされてるね。中とも連絡がつかない」 フェイト「エレベーターも動かないし、外への通信も繋がらない」 なのは「とにかく、ここでじっとしてるわけにはいかない。ちょっと荒技になるけど… フェイトちゃん、付き合ってくれる?」 フェイト「当然」 フェイト「こんなの、陸士訓練校以来だけど、色んな訓練やっとくもんだね」 なのは「だね!緊急時の移動ルートはしっかり指示してある。目標合流地点は地下通路、ロータリーホール!」 フェイト「うん!」 リイン「こちら、管理局。あなたの飛行許可と個人識別票が確認できません」 アギト「ん?この声…」 リイン「ただちに停止してください。それ以上進めば、迎撃に入ります!」 リイン「やっぱり!融合型!」 ヴィータ「あたしたちと同じか…。管理局機動六課!スターズ分隊副隊長!ヴィータだ!」 ゼスト「……ゼスト」 ウェンディ「ノーヴェ。作業内容忘れてないっすか?」 ノーヴェ「うるせぇよ。忘れてねぇ」 ウェンディ「捕獲対象三名。全部生かしたまま持って帰るんすよ?」 ノーヴェ「旧式とはいえ、タイプゼロがこれくらいで潰れるかよ」 スバル「戦闘…機人…」 ルーテシア「こっちはもういいね。次にいくよ」 ウーノ「はい、お嬢様。未確認のレリックと聖王の器が保管されていると思われる場所」 ルーテシア「機動六課」 次回予告 スバル「守らなきゃいけなかったもの」 キャロ「壊されてゆくもの。消えてしまうもの。次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS第17話」 スバル「その日、機動六課(後編)」 スバル・キャロ「Take off!」